話すよりも聞く力を磨いた方がいい理由



「それは、違うよ。」
「そうだね。よくわかるよ。私もね・・・(延々と続く経験談)」
「その時は、こんな風にしたらいいんじゃない。(アドバイスが続く)」
「はい、はい。そうそう。はい、はい。」
「ちゃんと、考えているの?」

などなど、今あげた返答は、上司と部下の間や相談者と相談を受ける側でよくある会話の一例ですが、身に覚えはありませんでしょうか?


企業研修で「聞き方」に関する研修を5年ほど前から行っていますが、この事例を出すと、受講者のほとんどの人が自分の経験を思い浮かべて、同意の表情がうかがえます。自分自身が言われた経験を思い出している人と、逆に、自分が言った経験を思い出している人と、それぞれですが、後者の人の場合は、ちょっと苦笑いされていることが多いです。
というのも、研修では、最初にご紹介した返答は、極力、避けるようにお伝えしているからです。


否定や経験談、アドバイス、同意や質問が全てダメということではありません。どれも相手との信頼関係度によってタイミングがあり、言い方(口調など)にもポイントがあるのです。ただ多くの場合、上司(相談を受けている側)は、部下(相手)の相談を、なんとかしたいという思いが働いて、ついつい経験談やアドバイスなどをすぐに話してしまいがちです。そして、会話が終わる頃には、部下はほとんど話さず、上司の話で終わってしまうなんてことも少なくないと思います。
(これは、上司・部下に限らず人間関係全てに言えます。)


実は、私はとても話が長くなりがちなタイプです。今は、状況や相手に合わせて、話す内容をまとめているので長くなることは少なくなりましたが、自分の得意分野や好きなことを話し始めると、うっかり・・・なんてこともあります。

なので私は、人の話を聞くときは、「聞くスイッチ」を入れています。

本当はこんなスイッチを入れずに、自然に聞くモードになれると良いのですが、前回のブログの最後に余談を書いた通り、人は自分の話をしている時は、脳に快楽物質が出ることがわかっています。それ故、多くの人は、聞くよりも、自分が話すことの方にスイッチが入りがちなのです。


それでは、相手から相談を受けて、相手に自分の経験談やアドバイスを伝えるタイミングは、いつが良いかと言うと・・・
それは、相手と信頼関係ができている状態。心理学の言葉で言うと「ラポール」が形成されている状態です。
この「ラポール形成」がされないままに話そうとすると、相手は、あなたの話に共感を示すことは難しい状態です。もしかしたら、聞いてくれているように見えるかもしれませんが、相手の心には届いていない可能性が高いと考えられます。


アメリカFBIの交渉術では、5つのステップを踏んで難しい交渉を成立させています。そのステップは、傾聴→共感→ラポール形成→影響→行動変容の順番です。
交渉と言うと、相手を説得するために「話す」イメージが強いかもしれませんが、実は、まずは相手の話を聞く、しかも共感を持って聞くということが最初のステップなのです。


みなさんも自分のこととして置き換えてみてください。

例えば、あなたが何か新しい提案を上司にしたとしましょう。その時に、最初から否定されたり、「それよりも、こっちの方が良いんじゃないか」など、上司の考えを聞かされたとしたらどうでしょうか?

例えば、あなたが誰かに、「AかBどちらがいいか迷っている」といったような相談をした時に、すぐに「Aの方がいいに決まっている」や「AもBもやめた方がいい」など言われたら、どうでしょうか?

どちらの場合もそうなのですが、提案や相談をしてきた自分の話を聞いてもらえずに、相手から一方的な意見を言われると、人は素直には相手の話を聞くことが難しいのです。けれど、その前に、なぜ、この提案をしたのかやAかBで迷っている理由などを、きちんと聞いてもらえれば、相手の話にも耳を傾けられる心理になります。
これは、好意の返報性とも言われますが、私たちは相手から何か好意を示されると、相手に好意をお返ししたくなるという心理です。
ここでは、自分の聞いてもらえたという心理が、相手の話も聞こうという心理になりやすいということです。


それでは、「話を聞けばいいんだ」「ひと通り聞けば話していいんだ」と思うと思いますが、この「聞く」の聞き方が、なにより重要です。単に「聞きました」ではなく、「何を聞くか」「どう聞くか」がラポール形成には欠かせません。この点については、また次回以降お伝えします。


聞く力がつくと人間関係は大きく変わります。
特に、会社で部下との関係や指導に悩みを持つ方には、話すよりも聞くことを意識されることをおすすめします。そして、私が知る限り「できるリーダーは話を聞くことができる」と感じています。



企業研修に関してのご相談をお受けしています。
お気軽にお問い合わせください。

三島澄恵
ユナイテッドウェーブス合同会社代表。 
元NHK-FMラジオパーソナリティでTVのナレーター・リポーターなどを経て、学校教育にも関る。
これまでインタビューした著名人は2000人を超える。 その経験や知識をブログに綴っています。
詳しいプロフィールは下記まで。
https://united-waves.jp

【話すは放す】聞くには人を変える力がある

「話すのが苦手なんです。」
「人前で、うまく話せるようになりたいです。」
「どうやったら、相手に伝わるんですか?」
など、話し方が上手になりたいという相談をよく受けます。
実際、私も経営者や講師の方のスピーチや話し方のトレーニングを行っています。

けれど、人の話の聞き方が上手くなりたいと言って相談してこられる人は、ほとんどいません。皆無と言ってもいいかもしれません。
ということは、多くの人は、「自分の話を聞いてもらいたい」「自分のことを理解して欲しい」と思っているという裏返しなのだろうと思います。



私は企業研修に携わって10年近く経ちますが、4〜5年ほど前から、管理職の方を対象にした「聞き方」についての研修を行うことが増えました。ある大手通信会社様では、受講された80名近い方々が全員、活用度100パーセントとお答えになりました。この結果に、私はとても驚きましたが、それ以上に、受講を依頼された会社のご担当者様が驚かれていました。ありがたいことに、今年もご依頼を受けています。


どんな研修をしたか・・・


その話をする前に、「聞く」ことがどれどほど大きな力があり、相手に大きな影響を与えるのか?を、お伝えしたいと思います。それは、私自身の経験に基づいたことです。
私自身が、人の話を本当の意味で聴けるようになったのは、30代半ばを過ぎてからです。それまでは、人の話を聞いていたとしても、根底には「自分が正しい」という考えが、べったりと心に張り付いていたので、人の話を聞いているようで、実は聞いていなかったと、今は思います。

けれど、そんな私が変わったのは、実際に自分が話を聞いてもらって、たくさんの気づきと勇気づけをもらい、人にどう話を聞いてもらえれば前に進めるかを分かったからです。人に話を聞いてもらえるということは、どれほど人を変えることができることかを身をもって知りました。その経験から、カウンセリングやコーチング、心理学や脳科学を学び、今に至ります。

私は、20代前半の過度なダイエットが引き金になり、摂食障害に陥りました。今から二十数年前の当時は、今ほど、摂食障害という言葉は一般的ではありませんでした。カウンセリングも気軽に受けられるような状況でもありませんでした。なので、どう対処して良いのかもわからず、誰にも相談できずにいました。
それでも自分なりに色々と調べていると「摂食障害」というものがあることを知りました。それは、精神的なことが深く関わっているということもあり、調べた資料をみる限り、受診をするなら精神科ということだったので、恐る恐る大学病院の精神科を受診しました。

精神科という響き。
当時、20代前半の私には、とても重たいものでした。それでもなんとかしたいと思って行ったのですが・・・そこで初めてお会いしたお医者様から、子どもの頃からの親との関係などを根掘り葉掘り聞かれたことを、今でも覚えています。私は、その時、担当のお医者様に心を開けませんでした。話を聞いてくれているというより、尋問されているという感覚に陥ったのだと思います。その後は一度も行くことはなく、そのままの状態が数年続きました。


そして数年後に出会った、民間のカウンセラーの先生のおかげで、私を少しずつ変わることができました。無理に話を聞き出そうとはしませんでしたし、言いたくないことは一切言わなくて良く、私が話すことを全て受け入れてくれ、前に進むために決めたことも優しく背中を押してくれました。私自身が考え、気づき、行動を選ぶという感覚を、私自身が持てる導きでした。

話を聞いてもらっていて「自分で選んだ」という感覚は、とても重要です。相手に誘導されたや、相手の言葉に影響されて決めたという感覚が心のどこかに残っていると、うまくいかなかった時は、どうしても相手の責任にしがちです。そうではなく、「自分が選んだ」という感覚を持つことで、行動に責任を持てるようになります。それでも私の摂食障害が治るまでは12〜13年ほどかかりましたが、その先生は焦ることなく、ずっと私に寄り添ってくれていました。


研修でもお伝えするのですが、「聞く」を漢字にすると「聞く」「聴く」「訊く」という3つがあります。通常は「聞く」の漢字表記で良いのですが、聞くを深めて考えてもらいために、あえてお伝えしています。「聴く」は耳を傾けて集中して聞くという意味。「訊く」は常用漢字には含まれていないのですが、尋ねて答えを求めるという意味があります。
もちろん「訊く」も大切なことなんですが、まずは「聴く」ことが、相手との信頼関係を築くためにとても必要なことです。けれど、この「聴く」はなかなか奥が深く、私もまだまだ至らないことが多々あります。


私が最初に行った大学病院の精神科は、訊かれることが中心で「聴いてもらっている」という感覚になれなかったのだと思います。もちろん、お医者様との相性もありますし、当時の私の心には大きな壁があり、お医者様に心を開くどころか、頑なに閉じていたのでしょう。

訊くよりも聴くを感じられると、人は心に余裕ができるのだと思います。例えば、溢れかえってしまっているゴミ箱にゴミを入れようとしても、ゴミはこぼれてしまいます。新しい洋服を買ってきても、クローゼットがいっぱいだと新しい洋服を入れることができません。
それと同じで、私たちの心の中も、それまで溢れるほどに溜まっていた考えや気持ちが、そのままの状態であれば、周囲の声は聞こえないのだと思います。自分の中にある溢れるほどの考えや気持ちを誰かに話すことによって隙間が生まれ、他の人の話を聞いたり、客観的な視点を持てる状態になって行くのではないでしょうか。


「話すは放す」とも言われます。

話し上手になることも、とても大切なことです。けれど、それと同じくらい、いえ、それ以上に聞き上手になることは大切だと思います。

今、企業では「心理的安全性」が求められています。心理的安全性が生産性をあげると言われていますが、心理的安全性をつくるには、そのチームの誰もが安心して意見を述べられる環境づくりが必要です。どんな意見であっても、それを自由に話せるチームづくりが欠かせません。そのためには、「聞く」ことこそ、必要なスキルではないかと思います。そのほかにも、ハラスメントの予防やメンタルケア、人材育成などにも「聞くスキル」は関わっています。
特に、組織の管理職やリーダーの方には、今後、さらに求められるスキルだと思います。


余談ですが・・・
人は自分の話をしている時に、脳から快楽物質であるドーパミンが出るんだそうです。それほど、人は、自分の話をするということが好きなんですね。話し出したら止まらなくなる人も少なくないですし、自分ではそんなに話していないと思っていても、意外に長い時間話してしまったなんてこともあります。
ついつい話してしまう長話は、ご注意くださいね。

三島澄恵
ユナイテッドウェーブス合同会社代表。 
元NHK-FMラジオパーソナリティでTVのナレーター・リポーターなどを経て、学校教育にも関る。
これまでインタビューした著名人は2000人を超える。 その経験や知識をブログに綴っています。
詳しいプロフィールは下記まで。
https://united-waves.jp

オンラインとリアルの差は「無駄」と「波動」



先日、久々にコンサートに行って来ました。
元々、3月に予定されていた公演だったのですが、新型コロナウイルスの感染拡大で9月に延期になっていました。


このところ、オンライン配信のコンサートも増えいていますね。私も、興味のあるものはオンラインで観ています。行く手間も省け、家でゆっくり観られるし、出演者もアップで観られるので、これはなかなか良いなと思っていた自分がいました。けれど、先日久々にコンサートをリアルで観て、やはり私は、リアルが好きだと感じました。



コロナの感染によってイベント自粛が始まった頃、以前の職場の同僚から「リアルの良さって何だろう?」質問されたことがあります。

「リアルの良さ?」
何となく、リアルの方が良いと感じてはいましたが、それを具体的に言葉にしようとすると難しいものです。その時私は、「双方向性があること」と答えました。特に、配信コンテンツは、どうしても一方通行になりがちです。リアルなコンサートなどは、そこに行くことで出演者との双方向感を味わえることが、私は魅力の一つだと思っていました。

ただ、今回、久々に行ったリアルコンサートで、私はリアルの良さは双方向以上に、無駄(空間や余韻)があることと、そこにいる人たちとの波動を感じられることではないかと思ったのです。



話は少し変わりますが、先日、ある研修を受けました。Zoomによる研修でブレイクアウトを使ったグループワークもありました。研修自体は、大変良い研修で大きな学びがありました。リアルに遜色なく、オンラインでも研修やセミナーが行えることも実感しました。しかし、そうは言っても、やはりリアル研修の方が良いと思ったのです。それは、リアルには無駄な時間があるということです。


例えば、ブレイクアウトルーム を使ったワークでは、時間になると有無を言わさず、全体の映像に切り替わります。研修時間の管理としては、とても優れている機能だと思いますが、時間でばっさり切り替わって何の余韻も無いことが、何とも言えない心持ちになりました。
リアルでは、ワークが終わり切れていないグループがいれば、ほんのわずかですが時間を調整できます。その調整時間中に、他のグループも別の話が生まれコミュニケーションが深まります。

他にも、リアルであれば、会場に入った時に、どんな人が来ているか観察したり、近くにいる人に声をかけて挨拶しあったりして、研修が始まる前から少しずつコミュニケーションが始まっています。けれど、オンラインではその無駄な時間が、全くと言って良いほどありません。もっといえば、途中休憩やお昼休憩の時間も、参加者と話をする機会もありません。研修をする上では、いずれも必要無い時間かもしれませんし、この感覚は慣れてしまえば問題ないのかもしれません。けれど、研修を受けて改めて私は、無駄だと思えるような時間が必要なのではないかと思っていました。



そして、先日のコンサート。
最初にも書きましたが、オンラインであれば、行く手間も省け、家の中で自分の好きなように、誰に気兼ねすることもなく観ることができます。会場の隣の人の声も、前にいる人の頭も気にせず、自分だけの世界です。出演者の顔もアップで観られます。


今回私は2階席から観ていました。双方向感は無いのでオンラインと同じと言えば同じですが、オンラインとは違う感覚と感動を味わいました。
ホール全体を見渡せば観客がいて、ステージ全体に出演者が並んでいて、照明、音も含め、会場の空間を感じながらのコンサート。オンライン配信のように出演者の顔がアップで見えるわけでも無く、目に入ってくるものは無駄な空間の方が多いのですが・・・それでも、その無駄な空間があるからこそ、コンサートの深みを感じられました。


他にも、リアルは、会場までの行き来に数時間かかり、雨や雪が降っていれば行くだけでもヘトヘトになることもあります。会場内のトイレに並ぶのも人が多くてひと苦労。隣の人の動きが気になったり、前の人の頭が気になったり・・・考えれば考えるほど、なんと無駄が多いのかと思いますが、きっとその無駄がリアルの良さだと思うのです。



もうひとつのリアルの良さは「波動」です。


どんなものにも波動があります。例えば、声や楽器の音は高いところから低いところまで、周波数が重なって生まれています。リアルであれば、その高低全ての波動を感じることができます。けれど、オンラインになると、通信の特性上、どうしても無駄な部分はカットされてしまいます。無駄な部分というのは、人の耳には聞こえない部分なので、オンラインで観る分には全く問題はありません。とはいえ、その無駄な音、聞こえていないと思っている音の波動が、リアルの感動を生んでいるのではないかと思うのです。

さらに波動は、声や楽器に限らず、人も植物や動物からも発せられています。誰もが波動を持っているんですが、その波動は、オンラインでは伝わりません。
コンサート会場にいるということは、出演者の波動はもちろんですが、観客一人一人の波動も感じていることになります。



オンライン研修や会議で話をすると、相手の反応がわかりにくく話しづらいと言われる方が多いです。私自身も、それはリアルとの大きな差だと感じています。ちょっとした表情や動きが分かりにくいということもありますが、もしかしたらそれは、波動を感じられないことも、理由の一つではないかと思っています。


これからのwithコロナ時代は、さらにオンラインサービスが増えていくと思います。オンラインは、世界中のどこにいてもつながることができる素晴らしいツールです。学ぶことも、観ることも、聞くことも、今まで以上に選択肢が増えました。必要なものを必要な時に、必要なだけ得られると考えると、とても効率的なツールです。どんどん活用したいと思っています。


けれどその反面、リアルの良さを忘れてはいけないと思うのです。
それは、無駄があること。人と人が波動によってつながる感覚。どちらも目に見えてはっきりするものではないですが、オンラインの普及が進むからこそ、その2つを大切にしなければ、オンラインを生かしていくことができないのではないかと、私は考えています。


私自身、現在、話し方のトレーニングや研修などもオンラインに移行しています。けれどやはり、「オンラインだけ」ではなく、「リアル」との組み合わせが、より良いトレーニングや研修をつくるのではないかと思っています。


みなさんは、オンラインとリアルの差をどう考えますか?



三島澄恵
ユナイテッドウェーブス合同会社代表。
元NHK-FMラジオパーソナリティでTVのナレーター・リポーターなどを経て、学校教育にも関る。
これまでインタビューした著名人は2000人を超える。 その経験や知識をブログに綴っています。
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【アートにエールを!に参加して】見えないサポートが大きな力



先日から、東京都の芸術文化支援「アートにエールを!」の制作裏話を綴っています。今日は、その制作の陰で支えてくれた人たちのことを書きます。


まずは、何はなくても、作画を担当した野村おとさんのご両親です。お母さんは、私の高校時代からの親友です。気のおけない友ではありますが、今回の作画のお願いはかなり悩んで連絡をしました。


それは、制作スケジュールもかなりタイトで、描く枚数も少なくとも10枚には至るだろうと想像し、学校、習い事などある中で取り組むことを考えると、小学生にはかなり大きな負担だと思っていたからです。正直なところ、断られる可能性が高いと思いながら一か八かで尋ねました。
プロジェクトの主旨と私の考えを伝えて、それから、本人であるおとさんに意志を聞いてもらいました。しかし、返事は思いもよらぬほどの快諾でした。
「いい経験になるし、本人もやるって言ってるから。」と、親友から連絡をもらったのです。

それからの制作に関しては、「いつまでにどうしたらいい?」「キャラクターはどうしよう?」「絵コンテは?」といった具合に、逆に親友から連絡をもらう始末。というのも、私は番組で映像制作はしたことがありましたが、紙芝居のようなものを作るというのは初めての経験だったからです。とはいえ、お願いしたのは私なのに、恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいでした。

今回のお話の舞台は、時代で考えると江戸時代のような感じです。小学5年生のおとさんの頭の中にはぼんやりとイメージがあっても、キャラクターを考え、実際に絵を描くにはかなりハードルの高いものだったと思います。けれど、そこは親友と親友のご主人が色々と調べてくれたようです。
私は、おとさんとご両親のやりとりをそばで見たわけではありませんが、ご両親は、おとさんのサポートはしても、基本的には、おとさん本人が考えて、決めるように導いていらしたと感じています。


それは、WEBミーティングをしたときに強く感じましたし、その後のやりとりを通しても感じたことです。私は基本的に、親友とやりとりをしていましたが、親友の口から何度も出てきた言葉は、「本人(おと)が、これが良いって言ってるんだよね。」でした。
例えば、私が好きなシーンの一つに、庄屋さまが、ねずみに耳を近づけているシーンがあります。私にはそういう構図は全く浮かばなかったので、
「こういう描き方があるんだね!すごい!」と話したところ、親友は、「おとが、これが良いって。」という答えが返ってきました。
逆に、私が「ここはもう少しこうなるかな?」という希望を伝えると、親友は「おとに聞いてみる。」と、必ず、おとさんを優先していました。

きっと、制作している間、色々とあったと思います。おとさんが、思うように描けなかった日もあるのでしょうが、上手にやる気を引き出しながら、おとさん自身が自分の力で完成できるようにサポートしていたんだと思います。



話は少しそれますが、私は企業研修などで、管理職の方に向けて部下育成のプログラムも行っています。その時に伝えるのは、「自己決定感」「自己有能感」「承認欲求」「成長欲求」をサポートする関わり方です。こうすることで、本人のモチベーションをアップさせ、かつ、自分で考えて行動する力がつきます。しかしこの関わり方は、簡単なようでなかなか難しいものです。しかも、それが関係性が近ければ近いほど難しくなります。

皆さんも経験ないでしょうか?相談を受けると、相手のためにと思いながら、自分がやり過ぎてしまったり、アドバイスをし過ぎてしまうこと。こうしてしまうと、相手の考えや気持ちが置き去りになって、結果、相手のためと思って行ったことが、相手のためにはならないことが多くあります。
例えば、親御さんが子どものことを思うあまりに、レールを敷きすぎたり、かまい過ぎたりすると、子どもは自分で決める自己決定感や自分はできるんだという自己有能感が育まれないことにつながります。
ちなみに私の場合は、両親にレールを敷かれようとして反発した口です(笑)小さい頃から、「お姉ちゃんは、看護婦(当時はこの表現でした)さんが向いているよ。」や「将来、薬剤師になるといいよ」などと父や母から言われてきました。小学生くらいまでは、その言葉をさして深く受け止めていませんでしたが、中学生くらいになって、「私に何が向いているか、勝手に決めないで!」と心の中で反抗していました。おかげで、こんあ風になりましたが・・・(笑)


今回の「アートにエールを!」で、素晴らしい作画を担当してくれた野村おとさん。その力を最大限引き出してくれたのは、ご両親だと思います。そして、おとさん自身が、自分の力でやりきった感覚を持てるようなサポートをなさったご両親の力に、私は改めて大きな学びを得ることができました。事実、おとさん自身の力でやりきったのですが。


そして、見えないサポートをしてくれた人は、もう一人います。手前味噌で恐縮ですが、それは、弊社のサウンドエンジニアです。朗読の収録はもちろんですが、編集途中で映像を見てもらいながら、BGMの良し悪しやタイミングなどのアドバイスを受けました。
私が心の中で「このBGMは、あまり良くないな〜。でも、選択肢も少ないし・・・」と思い、そのBGMを使っていると、やはりその点を指摘されました。そして、「もし、このBGMをつけるなら、無い方が良い。」という厳しいアドバイスもありました。他にも、最初の幕が開くところも、私はBGMのタイミングをあまり気にせず編集をしていると、「音をワンフレーズくらい聞かせてから幕が開き始めた方がいい」など、音響のプロとしての視点で、色々なアドバイスがありました。正直、耳が痛いアドバイスもありましたが、いいものをつくるためには、そのアドバイスをどう取り入れるかというのは欠かせないことですね。


今回は、テレビ制作のように多くの人を巻き込んで作ったものではなく、少人数で作り上げましたが、「ものをつくる」というのは、共同作業なんだということを、改めて強く感じました。何より、一人一人が「良いものをつくろう」と、前向きに取り組んでくれたことが、素晴らしい完成に導いてくれました。
表向きには出ていない人たちの大きな力、見えないサポートがあってこそ生まれた今回の作品。関わってくれた全ての人に、心から感謝するばかりです。

ぜひ、みなさんに見ていただけると嬉しい限りです。


追記
絵が完成し、郵送で送られてきた絵と同封されていた、野村おとさんからもらった小さな手紙にこう記されていました。
「いろんな人が見て、笑顔になってくれたうれしいなー😄」

この「ねずみとおもちと殿さまと」は、きっとみなさんが笑顔になっていただける作品です。お子さん向けではありますが、私はできれば、大人のみなさんに見ていただけたらと思っています。

https://cheerforart.jp/detail/5723

【アートにエールを!】小学5年生が描き上げた15枚もの絵



東京都の芸術文化活動支援事業「アートにエールを!」では、数多くの動画がアップされています。みなさんは、ご覧になりましたか?

その「アートにエールを!」プロジェクト、私が企画制作した動画もアップされています。その流れにつきましては、前回の投稿で記しましたので、よろしければご覧ください。

https://united-waves.jp/wp/2020/09/11/【動画採択】東京都芸術文化活動支援「アートに/



前回は、この物語の作者である永井輝信さんのお話を綴りましたが、今回は、この物語の絵を描いてくれた小学5年生の野村おとさんのお話です。
この物語では、15枚の絵を使っています。その絵は、全て、野村おとさんが描いてくれました。しかも、キャラクターづくりまで行ってくれました。キャラクター作りから始めた絵は2週間かけて完成に至っています。


まず、なぜ、おとさんに絵をお願いしたかと言うと・・・


私は、永井さんの物語を読んで、最初は声だけ(朗読)で形にしようと思っていました。本当は視覚的にも表現できたらいいんだけど・・・そう思ったまま月日が過ぎました。というのも、私は「絵を描く」ことが、大の大の大の苦手なんです!絵心が無いというのか、想像したものを絵にすることができないんですよね。

そうこうしているうちに「アートにエールを!」のプロジェクトの募集を知りました。「せっかくなら、永井さんの物語を大勢の方に届けたい。けれど、プロジェクトは動画だから絵か写真が必要。どうしたものか?」
そんなことを考えていたら第1回の募集には間に合わず、2回目の募集で参加することになりました。

「絵は誰にお願いしよう?」


様々な人を思い描いた中で、私の高校時代からの親友の子どもが、絵が好きで絵画教室に通っていることを思い出しました。それが、今回物語を描いてくれた野村おとさんです。小さい頃から絵が好きで、今も絵が好きで描いていると、親友から聞いていました。
私がおとさんにお願いしたのは、いくつか理由があるのですが、その大きな理由は、「大人には無い発想」です。小学生がこの物語を読み聞きして、どんな絵を思い浮かべるのだろう?どんな表現をするのだろう?大人には無い発想があるのではないか?そう思ったからです。その考えは的中しました。絵コンテ、下書きの時点で、「こんな発想は、私には無いな〜。そして、おとちゃんが描くキャラクターは、どの登場人物もとても優しい。」と思っていました。

おとさんは、今回、夏休みを使って絵を描き上げてくれました。今年の夏休みは、コロナの影響で2週間ほどしかありませんでした。短いお休みの中で、おとさんも色々と遊びたかったと思いますが、1日のほとんどを絵に費やして完成してくれました。


【下写真】野村おとさんの制作風景





おとさんの絵の制作過程を私が文章にするより、本人のコメントの方がより思いが伝わると思いましたので、おとさんが、夏休みの宿題で学校に提出したノートの一部ご紹介します。

「しょうやさまやとのさまや、昔の人の資料が少なくて大変だったけれど、お父さんとお母さんが調べてくれたので、なんとかキャラクターをつくることができました。ねずみは、1枚1枚、表情や動きをかえるのが、むずしかったです。下書きに苦戦して、ボロボロになった紙もありました。キャラクター作りから下書き15枚が終わるまで8日間ほどかかりました。それから、ぼくじゅうでふちどりをしました。細かいところはぺんでしました。わりばしやたけぐしを使いました。そこから着色です。着色〜完成までは5日かかりました。着色は、お母さんやお父さんも手伝ってくれました。
私の1番のお気に入りは、ねずみがひっくりかえってねているシーンです。光のあたり方と、しょうやさまの顔が好きです。
より多くの人に見てもらいたいと思っています。先生も、ぜひ見てください。」



いかがでしょうか?
これを読んでいただき、動画を見ていただくと、また違った視点で楽しんでいただけると思います。



今回の紙芝居風動画は、70代の永井さんの物語に、孫くらい年の離れた小学5年生の野村おとさんが絵を描いてくれました。ちなみに、永井さんには、小学4年生のお孫さんがいらっしゃいますから、おとさんとも、本当に孫と祖父という年齢差です。そこに、40代の私が加わり、三世代で作品が完成しました。


さらには、私と永井さんは都内在住。おとさんは福岡在住で、お互いに距離が離れています。おとさんとはもちろんですが、永井さんとも一度もお会いすることなく動画は完成しました。おとさんとは、WEBミーティングと電話、LINEを使って打ち合わせをし、完成品は郵送してもらいました。永井さんとは電話とメールでやりとりをしました。
実は今回の「アートにエールを!」は三密を回避して作成することもひとつの条件です。あえて同じ場所に集まらなくても、距離をつなぐことができるツールが、今の時代には数多く存在します。使う上での課題はまだまだありますが、それでも、それらを有効活用すれば、世代、場所を問わずに動画を完成させることができるんだと、私にとってもとても大きな学びになりました。


永井さんの想い、おとさんの一生懸命な想い、私の想いが詰まったこの動画。
最後は、見てくださるみなさんとつながって完成だと思っています。
ぜひ、多くの方に見ていただけたらと思います。

https://cheerforart.jp/detail/5723

https://cheerforart.jp/detail/5723

【動画採択】東京都芸術文化活動支援「アートにエールを!」



東京都の文化芸術支援「アートにエールを!」プロジェクト。
最初の募集の時はあっという間に定員になって、再募集が行われました。私は再募集で応募したのですが、応募総数は約1万2千人。その中から抽選が行われ4千人が参加資格を得られる運びです。

その後も、企画を提出し審査があり、審査を通過すれば動画作成に進めます。そして、動画を作成し提出後の最終審査を経て、ようやく採用となります。私が応募したのは、6月23日ですから、それから約2ヶ月半で動画がアップされたことになります。

参考までにですが、途中経過はこのような感じです。

6月23日 アートにエールを!東京プロジェクト(個人型) 再募集に応募

7月7日 抽選結果(手続き上は「個人登録」)のお知らせ通知

7月12日 企画応募

7月28日 企画採択の通知
*この通知から1ヶ月以内に動画を完成させ提出することになっていました。

8月26日 完成した動画を提出

9月10日 動画採用
*東京都の「アートにエールを!」の専用ホームページにアップされています。



さて、今回、私が作成した動画は紙芝居風の物語です。

この物語は、保護司として30年もの長きにわたり、社会や地域に貢献なさっている永井輝信さんが、趣味で書きためていらした作品のひとつです。数年前に、永井さんが、私に送ってくださったのですが、私はこの物語を読んで、とても感動しました。そしてその時、「いつか朗読して形にしたいな。」と思っていたのです。

なぜ私が、この物語に感動したかというと、それは、誰もが助け合って、笑顔でいる物語だったからです。

私が知っているこういう昔話のようなお話は、だいたい、悪いことをした人をこらしめたり、切ないエンディングを迎えるようなものが多いです。例えば、桃太郎、一寸法師、カチカチ山、花咲か爺さんなどなど、今読み返すとびっくりするほど残酷だなと思うものもあります。

けれど、この永井輝信さんが書かれた「ねずみとおもちと殿さまと」は、そういうことが一切無く、誰もが許し合い、助け合い、笑顔で過ごして行くというお話です。これは、作者の永井さんのお人柄そのものです。
実は、この作品を使用させていただくお話をした後に、永井さんから、物語の内容についてご連絡をいただきました。



実はこの作品、ネコが登場しますが、当初、永井さんの作品では「白いねずみ」だったのです。私はさして気にしていなかったのですが、永井さんは、このようなことを気にかけていらっしゃいました。


「私がこれを書いた時は、別に白いねずみが良いという意味ではなく、白いお餅を食べたからということで白いねずみを登場させたんだけれど・・・今は、人種の問題もあるからね。もしかしたら、この物語だと「白が良い」と捉えてしまう人もいるかもしれないなと思うんですよ。」


この作品を作ろうとしていた頃、アメリカで黒人の方が白人の警察官に殺されたという報道があり、人種差別に対して社会が問題意識を高めている時でした。永井さん自身にそういうつもりが無くても、「白が良い」そう受け止められる可能性があるのなら表現を変えた方がいいのではというご連絡でした。



私は、そのお話を聞いて、これほどまでに人を想い、社会を想い、世の中を想う方の心の素晴らしさに、改めて感銘を受け、かつ、私自身も大きな学びをいただきました。私自身、差別的表現や身体表現などは、これまでも細かに気をつけてきましたが、今回のことで、もっと細やかな視点で物事を考えることが大切だということを心に刻みました。

そこで私は、白ねずみを何に変えたら、この物語の意図を壊すことなく表現できるかを考えて「ねこ」にしました。多くの場合「ねずみとねこは仲が悪い」というイメージです。けれど、だからこそ、ねこが登場したら・・・そう思って、この部分は私が脚色を加えたのですが、永井さんも納得してくださいました。


永井さんは、保護司として30年もの長きにわたり社会貢献活動をなさっています。保護司というのは、犯罪をした人の改善・更生を助けるとともに、犯罪の予防のための啓発に努める方々です。法務大臣(国)から委嘱を受けた非常勤の国家公務員ですが、実質的には民間のボランティアの方々です。
また、永井さんは青少年の薬物使用防止に関する取り組みも積極的に行われています。こうやって、長きにわたり人や社会を想って生きてこられた永井さんが書かれた物語は、単に温かさや優しさだけでなく、私たちがどうやって、これからの社会を生きて行ったら良いのかを教えてくれているように思っています。

お話自体は子ども向けに感じると思いますが、できれば私は、大人の皆さんにも観ていただけたらと思っています。


次回は、この物語の作画とキャラクターを描いてくれた小学5年生の野村おとさんのエピソードです。小学5年生に限らず大人でも、わずか1〜2週間という短い期間で、15枚もの絵を描くというのは本当に大変なことです。さらには、キャラクターも考えて。

その野村おとさんが、どうやって絵を描き上げたか。そんなお話を次回は綴ります。

紙芝居風物語「ねずみとおもちと殿さまと」
下記からご覧いただけます。ぜひ、ご覧ください✨

アートにエールを!.001

https://cheerforart.jp/detail/5723

【話す力を磨く】話し方はマインド



自民党の総裁選で、3名の方の演説をじっくりと聞きました。
そうして改めて思ったのは、「話す時には、その人のマインドが全て出る」ということです。


今回、演説をなさった菅さん、石破さん、岸田さんは、選挙はもちろん、国会での発言、テレビなど、人前でお話しになることは、私たちの何倍も何十倍も何百倍も多く、様々な状況で話しをされていますので、自分の心に惑わされずに話せるのだろうと思っていました。けれど演説を見ていると、そのようなお三方でも、マインドが話し方に表れているのではないかと思う点が見て取れました。

例えば、同じような箇所で言葉に詰まったり、身振り手振りが必要以上に多くなったり、声の張りが弱々しい箇所があったり。それらは、話している内容やタイミングなどに関係していて、非常に興味深いものでした。


みなさんも、人前で話す際に、どんなに練習していても本番では緊張すると思います。時には、話している最中に、聞いている人の咳払いや、ちょっとした音が聞こえたりすると、一瞬気持ちがそれて言い間違ったり、その後の話す内容を忘れてしまったりすることは無いでしょうか?

先日、ある士業の方の話し方トレーニングを行いました。その際、話す内容に不安がある時には、「やっぱり」という言葉を連発されていました。数えてみると、30秒程度の中に10回もの「やっぱり」が出ていました。その映像を、改めてご本人に見ていただくと、「もういいです。」と、苦笑いしながらおっしゃっていました。ご本人も、なぜ、そうなったかは痛くお分かりのようでしたが、ここまで「やっぱり」を連発されているとは、思いもよらなかったようです。


これは何も、この士業の方だけではありません。誰しも、心に不安がある時に何かしらのサインが出ます。もちろん、私もです。
ただ、私のように話すことを仕事としている人は、人前で話している際に、途中何かハプニングが起きても、知らぬ存ぜぬのように平然とした顔をして話すようにトレーニングをしている人がほとんどです。



例えば、私がラジオやテレビに出ていた時の話です。出演時は、片側の耳にイヤホンをつけて、音声の送り返しを聞いています。時には本番中に、そのイヤホンを通して、プロデューサーやディレクターからの急な指示が入ることがあります。放送上では平然と話してながら、耳では指示を聞いている状態です。イヤホンから呼びかけられると、ついつい返事をしたくなったり、うなづいたりしたくなりますが、そういうことは一切しません。

イベントの司会の時も同じです。イベントの時は、放送の際よりももっと多くの音が聞こえてきます。お客様の声はもちろん、スタッフの声や指示、物が落ちたり、場所にもよりますが車が通ったりなどなど、本当に、様々な音があふれています。
これは笑い話ですが、あるイベントで影アナ(表には出ずにステージ袖でアナウンスすること)をしていた時に、スタッフの方が私の横で変顔をしたことがあります。私は笑いたい気持ちを抑えて、最後まで読み上げると「さすがだよね〜!」と感心されたことがあります。


そんな私が、最も集中力を必要とするアナウンスがあります。それは、声が遅れて聞こえてくるような会場(例えばアリーナやスタジアムなど)です。通常は、自分が話すとリアルタイムで声を聞いていますが、声が遅れて聞こえる会場は、自分が話した後に、わずかに遅れて声が聞こえます。
人間は、自分の声が遅れて聞こえると、実はとても話しにくいんです。わかりやすい例だと、電話をしている時に、自分の声が少し遅れて聞こえて、話しづらいという経験がありませんか?

声が遅れて聞こえる会場は、その状況で間違えずにアナウンスをする必要があるので、わずか3分程度のアナウンスでも、私はいつも手に汗をかいてしまいます。しかも、会場にはお客様が大勢いるので、その声も聞こえる中でアナウンスをするので、ほんの一瞬でも集中力が途切れたり、気持ちがそれると言い間違える可能性が高くなります。


私はどんなに緊張していても、周りで見ている人からは「緊張しているように見えない」と言われます。けれど、心の中ではバタバタもがいている状態なんです。そう見えない(そう見せない)ようにしているだけです。そしてこれは、トレーニングさえすれば、誰もができるようになります。
今回は、私が気をつけている主なポイント3つをお伝えします。


1つめは、話す内容を理解し、自信を持っていること。
当たり前かもしれませんが、自分が話す内容をきちんと理解して、自信を持っていないと、声に張りがなくなったり、文末まで言葉をはっきり話せないなどが起きてしまいます。他にも、声にならずに息だけで話してしまったり、自信があるように見せようとして無駄な力が入って言い間違いを起こしたりします。
まずは、自分が話す内容に自信が持てるように準備をしてください。

2つめは、自信を持って話せるように練習をすること。
自信を持って話せるように練習するというのは、内容の自信にプラスして、その内容を間違えずに、説得力を持って表現できるようにするということです。この時に、言いにくい言葉があったり、練習で言い間違った箇所があると、本番で自信が揺らいで、練習でつまずいたところで間違うことが生じます。
「完璧に話せる」と思えるところまで練習することで、自信を持って本番に臨めます。

最後は、「練習こそ本番」と思って取り組むこと。
練習中は、心のどこかに「これは練習だ」という意識があり、何か音が聞こえたりすると、途中で話すのをやめたりしてしまいがちです。けれど、練習こそ本番と思って、何が起きても話し続けることを意識することです。
私は高校生の頃、アナウンスの大会に出る練習の際、先輩からこんなことを言われました。「もし、鼻水が出そうになっても鼻をすすってはいけない。絶対に、他の音は入れたらダメ。」と。アナウンスの大会は声だけを審査するので、見た目は関係ないんです。今思えばすごいアドバイスだなと思いますが、これ以来、私は、人前で話す際は、何が起きても話し続けることを意識できたのだと思います。


とはいえ、こうやって練習して本番に臨んでも、やはり心のブレが生じる時があります。他にも、リハーサルでは上手く行ったのに、本番で間違えたりということもあります。これはまさに、私のマインドが関係しています。

自民党総裁選でお話になったお三方も、きっと、こういうことをわかった上で、かつ、日々、練習もして臨まれたのだと思います。それでもやはり、「自分の心には嘘をつけない。」「話し方には心が出る。」ということを、改めて強く感じました。そして何より、話し方はテクニックではなく、その人自身であり、その人のマインドなんだと、改めて胸に刻んでいます。


企業研修や音声波形診断を用いたエグゼクティブ向け話し方トレーニングなどを行っています。
お問い合わせは、弊社ホームページのお問い合わせからお気軽にどうぞ。

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【一人で思考整理をする方法】セルフディスカッション

セルフディスカッションは、私が勝手にそうつけている言葉です。本当は、誰かに話を聞いてもらいながら思考を整理し深めることが望ましいのですが、それができない時や、逆に、まずは自分だけで考えたいと思うときに役立つ方法です。

私は、自分のメンタルケアのために、20年ほど前からアメリカのストレスケアプログラムを学び始め、今でも心理学や脳科学を学び続けています。
日本では、いまもまだカウンセリングを気軽に受けるという社会ではありませんが、カウンセリングやコーチングも、基本的には「聞く」ということが主軸です。そして、相談に訪れた人の心の中にある答えを、その人自身が導き出す手助けをするものです。そして、今回のセルフディスカッションは、それを1人で行える簡単な方法です。もちろん、最も良いのは、誰かに話を聞いてもらうということですが、新型コロナウイルスによって、人と会うことがはばかれるいま、1人で行える方法ですのでご参考ください。

ちなみに、私がこのセルフディスカッションを行うのは、例えば、嫌なことがあったとき、仕事のアイディアを形にしたいとき、不安があるときなど様々です。


やり方はいたって簡単です。

1.ペンとノートを用意する
●ペンは、自分が書いていて心地が良いものをおすすめします。
高級なペンの方がモチベーションが上がるという方は、そういうペンをお使いください。私は、100円程度の黒のボールペンです。スラスラ書けて書いているの楽しいので、そのペンを使っています。

●ノートは罫線のないものがおすすめです。
ノートに罫線がない方が、自由度が増すと感じています。単に文字を書くだけでなく、絵や図など、自分が思うところに、思うままに書けると感じるノートをお使いください。


2.心の中に残っていることを書く
●書く内容は、どんなことでも構いません。
その時の、自分の心の中に残っていることを書きます。

●最初の1行を書いたら、その文章の中にある言葉を手がかりに深掘りします。
例えば、つい先日、私はこんなことを最初に書きました。
「新しいサービスを始めるときにマイナスやリスクが気になって、ついついそこに目を向けてしまう。以前までは、もっと勢いがあったように思うのに。」
この文章の後に、「なぜ、リスクを回避したいのか?」と書きました。
そして次に「リスクとはどういうこと?」→「私の思っているリスクは、より良いサービスを提供するために足りないと思うこと。」→「より良いサービスとは?」→「より良いサービスは、相手が喜んでくれること。わかりやすさ、成果、評価など」→「現時点で、それはできていないのか?」→「充分に相手は喜んでくれているし、成果も出ていて、評価ももらっている」→「ではなぜ、リスクを回避したいのか?」→「新しいサービスであるということの不安」→「不安とは?」→「人が集まらなかったらどうしよう?とか、準備が大変だと感じてしまうとか」→「それらが解決すれば不安はなくなるのか?」→「・・・・・・そうじゃない、自分ができるかどうかが不安」→「自分ができるかどうかは、どうすれば克服できる?」→「今までどうやって克服してきただろうか?・・・思い返すと、やりながら修正してきた。」→「やりながら修正は可能なのか?」といった具合に、書き出していきます。


3.深堀りする際の主なポイント
①「なぜ?」という問いかけをすること。
②「抽象的な言葉」について具体的な答えを考えること。
③これまでの「自分の成功体験」や「強み」を思い返してみること。



こうすることで、何だかわらかない不安が明確になって、自分の中で答えを見つけることができるようになります。



新型コロナウイルスの感染拡大で人に会う機会がめっきり減り、ちょっとした雑談や悩みを話すこともできずに、自分の中に溜めてしまっている人は少なく無いと思います。最初のうちは、大して気にらずに生活していても、時が経つにつれて、多くの人が「誰かと話したい」「日々のちょっとしたことを友達と仲間と話したい」「子育てや家事の不満を言い合いたい」「仕事の愚痴や不満を聞いてほしい」などと思っているのではないでしょうか。

「話す」は「放す」とも言われます。
心の中に溜まっていることを「話して手放す」ことで、心に余裕が生まれます。
だから、一番良いのは、誰かに連絡を取って話をすることです。
けれど、それが叶わない時は、セルフディスカッションを試してみてください。最初はほんの5分程度、思うままに書いてみるだけでも良いですよ。そして可能な限り、毎日、続けてみることをおすすめします。


私は毎日、夜寝る前に、10分程度書いています。
その日に行う予定にしていたタスクをチェックして、次の日のタスクを書いて、それからその日のセルフディスカッションを行っています。それだけで、ずいぶんと頭がスッキリして安心して眠りにつくことができます。

セルフディスカッション。自分の中にある答えに出会えると思いますよ。



企業研修や音声波形診断を用いたエグゼクティブ向け話し方トレーニングなどを行っています。
お問い合わせは、弊社ホームページのお問い合わせからお気軽にどうぞ。



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