もし、私が〇〇なら・・・#話し方の心得3

先日、知り合いの大学教授にお声がけを頂き、教授のゼミ生の皆さんに「面接に効く『話し方』」をテーマに講義をさせて頂きました。
90分の中でワークを加えながら「どれだけ伝えられるだろうか」と、去年の末からずっと考えて臨んだ講義でしたが、学生さんにも多くの気づきがあったようで、お声がけくださった教授もとても喜んでくださっていました。
ありがたい限りです。


こんにちは。
フリーアナウンサーの三島澄恵です。

実は今回の講義は、普段の研修に比べると少ない時間だったのですが、「話す」「聞く」「強み発掘」という3つを盛り込みました。
普段は、一つに焦点を当てて行くのですが、これから就職活動を行う大学3年生の皆さんには、すぐに実践できるような内容だけに絞込みお伝えしました。

なぜなら、もし私が大学生なら、すぐに役立つスキルを手に入れたいと思うからです。

この「もし、私が〇〇なら」という考え方は、話す内容を考える際の大きなポイントです。


ここで少し私の話ですが、私は講師の仕事を始めて12年程経ちます。
5歳のお子さんから上は70代の方まで、業種も立場も様々な方々です。

例えば、企業研修であれば、コンビニエンスストア・飲食・IT・病院・公的団体・士業、経営者、新入社員、若手社員、管理職など様々です。
今でこそ、リピート率も98%を超え、満足度も95%以上(時には100%)の結果を頂けるまでになりましたが、実は、講師を始めた頃は反省の日々でした。

その中で、最も私に足りなかったのは、受講者のことを想像できず「自分が良いと思うこと」を伝えていただけの内容だったということです。
それから何度もブラッシュアップしながら、今に至ります。

相手に「伝える」ではなく「伝わる」ために話すには、相手のことを想像することが、私は最も重要ではないかと考えています。
ここで言う「想像する」というのは、相手を「理解しようと努める」ことです。

私の場合は、この時に、「もし私が相手の立場だったら・・・」と、
状況や感情なども考え、相手になりきる感覚を持つようにしています。

実は、冒頭の学生さん向けの講義の内容は、
最初「話す技術」のことをメインに考えていました。

これから就職活動を行う上では、
立ち居振る舞い、声の出し方、発音、口調、時間の感覚など、
話す上での基本的なことが役立つと考えたのです。

そして、大まかに作った内容を教授に見ていただくと、
「学生は『自己紹介で何を話せばいいか』と聞いてくるかもしれません」
ということをおっしゃいました。

私はその一言にハッとしました。
確かに、自分について、何を話せばいいのか迷います。
これは何も面接に限らず、自分を紹介するということ全般でもそうです。
まずは、自分の強みを見つけられるような時間を作ろうと考え直しました。

そこでもう一度改めて
「もし、私が、これから就活を控えた大学3年生なら・・・」
この思考に立ち返りました。

就活に対しての漠然とした不安や、周囲の人と比べてできていない自分、やりたいことが明確になっていない自分にばかり意識が行くなど、マイナスな感情が大きいのではないかと思います。
しかも、コロナ禍での就職活動は孤独になりがちです。そこを想像すると、周りの人からの客観的な意見が支えになるのではないかと思ったのです。

自分のことというのは自分がよくわかっているようで、実は、わかっていないことや気づいてないことが多くあります。
周りの人に言われて、「それは長所なの?」と思うことも多いと思います。
周りからの一言は、強みの発見にもなれば、勇気づけや励ましにもなります。

それと合わせて、「話す」「聞く」を並行して講義に組み込めないか?
そう考えて、約1ヶ月間、内容を練り直して臨んだ講義でした。

「もし、私が〇〇なら・・・」
この思考の時に大切なのは、相手の年齢・性別・立場や置かれている状況などを踏まえ、その先に、どんな考えや感情を持っているかです。特に、
悩みや不安がどこにあるのかを考えられると、それを解決したり、サポートできる話ができるようになります。

聞き手は、自分のことを理解しようとして話してくれている人の話には耳を傾けてくれます。完全に理解することはできませんが、話す側が「聞き手を理解しよう」とする意識が「伝わる内容」の第一歩です。


フリーアナウンサー
キャリアコンサルタント
三島澄恵のプロフィールはこちらから↓
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想いをカタチに。人の心をつないでゆく。
ユナイテッドウェーブス合同会社

答えること、質問すること

「会話が成立していない」
昨日の緊急事態宣言の記者会見、菅首相と記者の方々の質問のやりとりを悶々としながら聞いていました。

例えば、フリーの記者の江川紹子さんの質問です。
文章は、首相官邸のホームページに全文が掲載されているので、そちらから引用しています。
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0730kaiken.html

江川紹子記者
「フリーランスの江川紹子です。よろしくお願いします。
 ワクチンについてはですね、菅首相、常に具体的な目標を明確にしてですね、進めてこられていると思います。ただ、当面はワクチンが行き渡るまでは人の接触や移動の機会を減らしていくしかないわけで、先ほど更に人流を減らすようにということもおっしゃいましたが、それに関しては具体的な目標と、それから、それを実現するための方法というものが示されていません。具体的には、どれぐらいの人を減らす、あるいは人と人との接触の機会を減らすということが目標としてあるのか、そして、そのためには具体的に何をしていくのかということです。先ほどテレビ観戦を勧められましたけれども、それだけでその目標が到達できるのかということをお伺いしたいと思います。
 尾身先生にも同じことをお聞きしたいと思います。お願いします。」

菅首相
「これ、東京大会の開催が決定してから、東京都内における、これは東京都内が圧倒的にオリンピックの会場もありますから、そういう中で東京に集中する人流を防ぐための対策というのは当時から考えて行ってきています。それが車の乗り入れ3割減だとか、あるいはテレワークによってたしか6割ぐらいだったと思いますけれども減をするとか、それは東京都と連携して、そうしたことを対応してきているということも、これは事実であります。
 そして、無観客でなく一定数観客を入れてのときでも30万は首都圏の人流を少なくする、そうした対策を練っていましたので、そうしたものに基づいて今、行っているということであります。」

江川紹子記者
「具体的な目標は、今の目標は。」

菅首相
「ですから、大会に集中する人のそれよりも少なくするということです。ですから、そこはできていると思っています。」

いかがでしょう?
このやりとりをどのように思われますか?

江川さんは、今後の感染者数の具体的な数値目標と、それを実現するための具体的な対策について聞いているのですが、菅首相の答えは、オリンピックの話、東京都(関東圏)の話での答えになっています。しかも、江川さんが質問している「今後の具体的数値目標と具体的対策」については語られていません。
もしかしたら、江川さんの質問の最後の「先ほど、テレビ観戦を勧められましたけれども、それだけでその目標が到達できるのかということをお伺いしたい。」この言葉に引っ張られ、それを元に答えられたのかもしれません。百歩譲ってそうだったとしても、「今後」というところの答えにはなっていません。

答えるのが難しい時などに、あえて質問に答えているようにして話をはぐらかすということは、政治家の方だけでなく、日常の会話でも見られます。今回も、そういうことなのか、それとも、そもそも質問の意図が伝わらなかったのか、それはわかりませんが、国のトップの発言というのは、国の先行きを決める重いものだと考えると、悲しさを通り越し、言葉も出ないあきらめに近い気持ちになりました。

と同時に、いつも記者の方の質問を聞きながら思うこともあります。
それは「質問が長い」ということです。

質問に至るまでに経緯を話す人もいれば、国民の不安(だと思っていること)を代弁する人、自ら(もしくは自身が所属する会社)の意見を話す人など様々な人がいます。それを聞きながら、私は質問の意図が薄れているような気がする時もあります。
もっと短く、ストレートに聞けないものだろうか?その方が、より伝わるのではないかと思うことが多々あります。

私がNHK時代にインタビューをするときに、アナウンスの統括部長に教わったのは「質問を短くする」ということでした。これは、簡単なようでなかなか難しいことなのです。
なぜ、難しいかというと、それは多分、相手の言葉に対して「何か(例えば、気の利くようなこと)を言わなければいけない」という思いや、「自分の意見や感情を言いたくなる」また、質問の内容によっては「質問を柔らかく聞こうとしてエクスキューズが多くなる」「視聴者や観客がわかりやすいように」というような意識が強くなるからではないかと推察しています。


話すこともとても大切なことですが、的確に質問をする(相手の話を聞く)というのもまた難しく、大切なことだと思います。
こうやって色々と思うことを思うままに綴っていますが、「自分ができるか?」と自問自答すると「できる!」と、答えられないのも確かです。それほど、難しいことだと思うからです。ただだからこそ、日々、できていない自分と向き合いながら、少しでもできるように意識してトレーニングしようと思います。

マイクは話し手の大切な道具〜マイクは叩かないで!②

こんにちは。
フリーアナウンサーの三島澄恵です。

TEDxKyotoのスピーチトレーニングについて書いていますが、昨日からは少しだけ離れてマイクの使い方についてお伝えしています。

弊社のテクニカル事業部で音響専門の田村の話を元に、マイクの特性や使い方をお届けしていますので、みなさんがマイクを使って話をされる際の参考になさってください。

マイクは叩かないで!②
(ユナイテッドウェーブス合同会社 テクニカル事業部 田村尚)

前回、マイクで拡声する仕組みをご紹介しました。今回はいよいよ本題の「なぜ、マイクを叩いてはいけないか?」ということをお話しします。

前回、拡声のシステムは非常に小さなエネルギーを、電気によって大きなエネルギーに増幅すると説明しました。では、マイクを叩くのがなぜいけないのか?なんとなく想像がつきますか?

例えば、普通の声の大きさ程度の空気の振動で、私たちは痛みを感じることはありません。しかし、誰かに手で叩かれれば痛みを感じますよね。そのくらいエネルギーに差があり、それがマイクにも起きているということです。

本来非常に小さなエネルギーを拾うためにあるシステムに、必要以上の大きなエネルギーを与えれば、色々なところに過大な負荷がかかります。それはつまり、機材を予期しないところで傷める危険があることを意味します。
機材を傷めるということは機材トラブルに繋がり、それがイベント全体に影響する危険があるため、私たち音響は嫌がるのです。

マイクのスイッチが入っているかどうかが気になり、マイクを叩く人をよく見かけますが、マイクの仕組みを理解いただき、マイクは叩かないようにお願いしたいのです。

 では、マイクを叩かずにスイッチが入っていることを確認するにはどうすればよいでしょうか?それはは次回。

マイクを叩いてはいけない理由、お分りいただけだでしょうか?

私も、司会などの本番で、出演者の人がマイクを叩いている姿をよく見かけます。しかも本番中に。

「ばんっ、ばんっ」さらにもう一度、「がんっ、がんっ」と何度も。
それを見るたびに、マイクは大丈夫だろうかとヒヤヒヤしてしまいます。

1回、2回で壊れるほどの作りはしていないと思いますし、音響の人たちも細心の注意を払って準備をしていますから、本番中に壊れたところは見たことがありません。しかし、マイクは様々なところで使っていますから、積み重なれば、どこかの現場で、何かしらの不具合の症状が出ることもあるのではと思います。

マイクは、話し手にとって大切な道具です。
その道具を大切に扱うというのは、話し手として当然のことだと私は考えています。カラオケボックスや宴会場・会議室などで、頭がへこんでいるマイクをよく見ると心が痛くなります。

テーブルに置く時はそっと置いたり、持つ時も優しく丁寧にしたり、置く時も転がらないようにタオルやハンカチの上に置くなど、マイクを大切に扱ってほしいなと思います。

明日もまた、田村のコラムをお届けします。

弊社ユナイテッドウェーブスでは、司会や企業研修・スピーチトレーニングとイベントやコンサートなどの音響業務も請け負っております。
お気軽にご相談ください。

ユナイテッドウェーブス合同会社
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諸橋寛子さんのTEDxKyotoでの発表の様子。
ご覧になっていない方は、ぜひご覧ください。

TEDxKyoto 2018 スピーカー 諸橋寛子さん

話し方は、経営者やビジネスマン、学校の先生や研修講師、さらには、大学生、高校生、小中学生、未就学児までまで、幅広い方々を対象に行っています。
お問い合わせはお気軽にどうぞ。




ハプニングを楽しもう!!

こんにちは。
フリーアナウンサーの三島澄恵です。

昨日は、練習は本番通り、本番は練習通りというお話を書きましたが、練習では予想もしなかったことが、本番では、多々起こり得ます。

今回のTEDxKyotoにおいても、本番でハプニングがありました。

その一つは、マイクの音。
もう一つは、観客の状態です。

今回のマイクはヘッドセットでした。
ヘッドセットの場合は、通常、話し手が自分でスイッチの入り切りをすることはありません。しゃべり始めに合わせて、音響の人が操作をして音声が入るようになります。

ただごく稀に、話し始めの音が入らないことがあります。
この多くは、音響の人のタイミングが遅れていたり、音声を入れ忘れているときに起きるのですが、話し手にとっては、この最初の音が入っていないと感じた瞬間に、焦りが生じたり、緊張が高まったりするのです。また、「このまま話し続けてもいいのだろうか?」などの不安も起きます。

もともと緊張で張り詰めた中ステージに立っているので、話し始めに不安が生じると、その後に影響することも多々あります。音響に限らずこのような周囲のミスは、私も幾度となく経験してきました。

もし今回のように、話し始めの音が入っていないと感じた場合の対策は、もう一度最初から話すということです。
また、もし、話し始めからしばらく入っていなかったら音響機器のトラブルも予想されるので、「マイクの音が入っていないようですね。どうでしょう?聞こえますか?どうでしょう?」などと繰り返し、自分の声が入ったら「改めて、みなさん、こんにちは。」とハプニングへの軽い一言を加えて、最初から話し始めるという方法もあります。

ちなみに、ハプニング対応のちょっとした一言で、会場の場も和んで観客の聞く意識を高めることもできますし、話し手自身も緊張の糸がほぐれることがあります。

マイクのトラブルは、基本的には音響機器などのトラブルによりますが、まれに話し手がマイク自体のスイッチを切っている場合もありますので、話し手も、自分がどんなマイクを使っているのかを知っておくといいかもしれません。

諸橋さんは、マイクのことは気にならなかったそうですが、観客の様子(聞いている状態)が気になったそうです。本番の諸橋さんを見ていましたが、緊張は感じられるものの堂々と落ち着いて最後まで話されていたので、この話を聞いて驚きました。

確かに客席の様子はリハーサルではわかりません。また、ステージから客席がどう見えていたのかは、話し手本人にしかわかりません。

スピーチを終えた諸橋さんに聞くと、本番では、椅子席の前とステージの間にクッションソファのようなラフな椅子が設けられていて、横たわって聞いている観客もいたということでした。

ステージはスポットが当たっているので、登壇者は観客の姿は意外に見えないものです。しかし、このクッションソファがあったステージの前あたりは、登壇者からも見えやすい明かりと位置だったこともあり、観客の聞いている姿が、より見えたのだと考えます。

この話を聞いた時、私がもし登壇者でも気になっただろうと感じました。
そういう状態で聞く人が座るというのを、話し始める前にわかっていれば、必要以上に意識することは無かったかもしれませんが、無いと思っていたものが急遽現れたり、逆に、あると思っていたものが突然無かったりすると、驚いてしまいます。頭に入れていた話す内容も、一瞬飛んでしまうこともあります。

以前私がとても焦った経験は、リハーサルまで使っていた司会台の手元明かりが、本番が始まって司会台に立つと、全く別物に変わっていたことです。
そのイベントでは、私の話し始めの際はステージも会場全体も暗めの照明の演出でした。司会用のピンスポットが当たるとはいえ、やはり手元に明かりが無ければ、台本を読むのに厳しく、リハーサルの時点で司会台に明かりを用意してもらいました。

手元明かりもいくつか種類があるので、リハーサルでその使い方をシミュレーションしていたのですが、本番で用意されていた明かりは、これまで使ったこともないもので、スイッチがどこにあるのかさえ不明。それでも明かりを点けなければ台本を読めないので、最初の覚えているフレーズを平然と話しつつ、手は明かりのスイッチを探していたこともありました。

今では、笑い話のひとつです。

今回のTEDxKyotoに限らず、イベントなどにおいてハプニングはつきものです。
想定していても想定通りにはいかないもの。
ハプニングが起きた時は、そのハプニングの流れに合わせて対応できるちょっとした心の余裕があると、ハプニングを味方につけてイベントがより面白いものになることもあります。

ハプニングが起きた時こそ、チャンス!
ハプニングを楽しもう!!

そのためには、やはり練習を重ねることです。そしてできれば、経験を重ねることです。
「何が起きても大丈夫!」と思えるくらいの練習と、様々な経験を重ねていけばハプニングはチャンスに変えられます。

そして、本番を楽しめるくらい心の余裕を持って臨めるようになりますよ。



諸橋寛子さんのTEDxKyotoでの発表の様子。
ご覧になっていない方は、ぜひご覧ください。

TEDxKyoto 2018 スピーカー 諸橋寛子さん

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シャドーイング

こんにちは。
フリーアナウンサーの三島澄恵です。

引き続き、TEDxKyoto本番に向けた具体的なトレーニングについてお伝えしていきます。

今回は「シャドーイング」です。

昨日は、お手本と合わせて練習するコーラスリーディングをご紹介しました。今回のシャドーイングもお手本を聞いて話すと言うのは似ていますが、シャドーイングは、お手本を聞いてその後に続けて話すというものです。

諸橋さんのトレーニングでは、この方法を行いませんでしたが、TEDxKyotoの前日のリハーサルの時に、他の登壇者のトレーニングサポートで行いました。

シャドーイングは、英語の勉強ではよく使われているので、「英語ではやったことがあるけれど」という人がほとんどだと思います。実際、TEDxKyotoの登壇者のみなさんもそうでした。日本語をシャドーイングするというのは、新鮮な感じだったのではないでしょうか。

シャドーイングのポイントは、お手本を聞いた通りに声にすることです。お手本を聞いて頭で考えず、その通りにすぐに声にすること。ここがポイントです。

言われたことを頭で考えてしまうと、口に出すまでに時間がかかります。結果、お手本通りではない自分の話し方のままになってしまいます。
また、できるだけ短く区切って練習をした方が効果が高まります。

TEDxKyotoには、スピーチトレーニングされる専属のスタッフの方がいらっしゃいます。今回は、その方と共にお手伝いをさせて頂きました。リハーサル前の発声練習と、リハーサルの登壇者の映像を確認しながら練習といった具合に、詰めの練習での立ち会いです。

その際、TEDxKyotoの専属スタッフさんから、「シャドーイングをお願いします。」と言われ、トレーニングをさせていただきましが、私の区切り方が少し長目だったようで、「もう少し短く、単語ぐらいで区切って行ってください。」とアドバイスをいただきました。

そこからは、短い言葉でのシャドーイング。
短い言葉で区切ったことで、それまで不自然だったイントネーションが、短時間で自然なイントネーションに変わって行きました。

シャドーイングは私も普段のトレーニングで行っていますが、できるだけ短く区切る点は、これ以降注意して行っています。

話し方に磨きをかけたいと言う人は自分で練習することも大切ですが、お手本となる人と一緒に練習することをおすすめします。それが上達への近道かもしれませんよ。

諸橋寛子さんのTEDxKyotoでの発表の様子。
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ブレスと間の関係

こんにちは。
フリーアナウンサーの三島澄恵です。

先日から、綴っているTEDxKyotoで登壇された一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーションの代表理事 諸橋寛子さんのスピーチトレーニングで、私自身が改めて気づいた点をブログにまとめています。

今回のスピーチのように決まった原稿を覚えて話すというときに、誰もがほぼぶつかる壁は、不自然なイントネーションです。昨日は音の上がり下がりについて書きました。

今日は、ブレス(息)と間の取り方についてです。
ブレスと間の取り方もまた、文章のつながり方と関係しています。

ここでもまた昨日、例に出した文で説明しましょう。

「私は、フリーアナウンサーの三島澄恵です。」

この一文であれば、通常話しているときは途中でブレスを取らずに一息で話しますが、これが原稿になっていると、次のように話す人がほとんどです。

「私は、(ブレスを取る)フリーアナウンサーの(ブレスを取る)三島澄恵です。」という具合です。

「私は」の後でブレスを取ると、「は」の音が下がり、「フリーアナウンサー」の出だしの音が高くなります。「フリーアナウンサーの」の後でブレスを取ると、同じように「の」で音が低くなり、「三島」で音が上がるため、不自然なイントネーションがつきます。

また、ブレスを取ると、その分、間が必要になります。ほんのコンマ何秒のことですが、そのわずかな間が文章の意味と関係しています。

例文ですが、「私は」の後の間の長さと「フリーアナウンサーの」の後の間の長さは、若干ですが、前者の方が長くなります。それは、「私は」よりも「フリーアナウンサーの」の方が、三島澄恵とのつながりが強くなっているからです。

ブレスや間の取り方、昨日お伝えした音の高低については、文章でお伝えするのはなかなか難しく、分かりづらかったかと思いますが、1文が長くなると伝わりづらくなることはお分かりいただけたでしょうか?

今回の諸橋さんの原稿は、長い文章でも1文80文字少しです。他の文章は概ね60〜70文字で、短いものであれば20〜30文字です。ニュース原稿などでは120文字近いものもありますが、それは長い文章で、多くは70〜80文字前後です。

文章が長ければ長いほど、主語と述語の関係性や、説明する語の関係性が分かりづらくなるので、スピーチ原稿やプレゼンの話す内容をまとめている人は、もう一度、1文の長さを見直してみてください。

そして準備ができたら、必ず声に出して練習してみてください。そうすると、話しやすさや伝わりやすさを確認することができます。

次回は、実際にどのような練習をすればいいのかをお伝えします。

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原稿を話すように読むには?

こんにちは。
フリーアナウンサーの三島澄恵です。

先日から、TEDxKyotoで登壇された一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーションの代表理事 諸橋寛子さんのスピーチトレーニングを担当させていただいたときのことを綴っています。

原稿ができあがり、前回のブログからは声に出してのトレーニングについてお伝えしていますが、原稿の文章を話すように自然に読むというのは、実はとてもハードルが高いのです。
アナウンサーがニュース原稿を読んでいる様子は、皆さん誰しも見聞きしていると思います。原稿を読むだけなら誰もでもできると思うかもしれませんが、原稿を単に読むことができても、それを自然なイントネーションやアクセントで読むにはトレーニングが必要です。

みなさんも試しに一度、新聞などの文章を声に出してアナウンサーのように読んでみてください。そうすると、自然に読むという難しさを感じていただけるのではないかと思います。

その難しさのひとつがイントネーションです。これもまた、母音と同じく日本語の特徴から来るものかもしれません。

日本語は音の高低が鍵を握っています。それは、アクセント(アクセントについては、後日改めて綴ります。)もですが、1文の中でも言えます。

日本語は、話し始めの音が一番高く、途中上げ下げをしながら、文末は音が低くなっていきます。

例えば、「私は、フリーアナウンサーの三島澄恵です。」という1文。私はの「わ」、フリーの「ふ」、三島の「み」で音は高くなりますが、最後の「です」は、「私は」よりも低い音になります。実際に声に出してみるとわかりますが、「です」が「私は」よりも音が高くなると、とても不自然に聞こえます。

加えて、「私は」の「は」の部分。
この「は」(助詞)の音を必要以上に高くしたり、低くすると自然な口調ではなくなります。そして私たちは、原稿を読むと不自然な音の上げ下げを行ってしまうのです。普段の会話では、そんな不自然なイントネーションになることはないのに、原稿になるとそうなってしまうという不思議です。

そしてこれは、トレーニングを始めて、誰もが必ず通る道でもあります。

今回、諸橋さんのトレーニング以外に、TEDxKyotoの前日のリハーサルで、登壇者の方々のボイストレーニングも担当させていただきましたが、みなさん不自然なイントネーションがついていました。TEDxKyotoのトレーニング担当の方も、その点を何度も注意されていましたが、なかなかすぐには直らない難しいポイントだと、改めて実感しました。

諸橋さんは、練習を何度も録音し、音の違いを聞いて直していきました。

自分では不自然な話し方をしていないと思っていても、実際に聞いてみると不自然だと気づくことができます。もし今、トレーニングをしている人は、練習を録音して聞き直して、繰り返しトレーニングをすることをおすすめします。


文章は間違えずに読んでいるだけでは伝わりません。原稿をいかに自然に話すように読み、かつそこに説得力のある表現をつけられるかがスピーチには求められます。

次回は、日本語の文法が関係している音の高低についてお話しします。

諸橋寛子さんのTEDxKyotoでの発表の様子。
ご覧になっていない方は、ぜひご覧ください。

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滑舌を良くするのは母音

こんにちは。
フリーアナウンサーの三島澄恵です。



TEDxKyotoの登壇者の諸橋寛子さんのスピーチトレーニングをさせて頂き、私自身が改めて感じた話す力についてや、話す時のコツについて綴っています。

前回までは、話す内容についてお伝えしてきましたが、今日からは日本語の特徴からわかる発音やイントネーションのお話をして行きます。

今回は母音についてです。

日本語の母音は「アイウエオ」の5つです。これに子音がついて音をなし、連なって行くことで言葉になります。

ちなみに英語の母音はかなり多く、アに近いエやオに近いウなど、さらには、単母音・長母音・二重母音など様々です。中学校の英語の先生に、英語の母音の数を聞くと「30個近い」と教えてくださいました。

日本語は、「アイウエオ」のたった5つですが、この5つの母音の口の形と舌の位置が全ての言葉の元になります。劇団四季のトレーニングでは、セリフを全て母音に置き換えて行っています。
例えば私の名前「みしますみえ」であれば、「いいあういえ」と置き換えて練習をするということです。そうやって母音に置き換えることでセリフがはっきりと発音でき、観客のみなさんが聞きやすくなるのです。それほど、日本語の母音は、言葉を明瞭に話すために重要なのです。

前回のブログで、諸橋さんの苦手だった「父(ちち)」という発音の話をしました。諸橋さんの話し方のクセの一つは、舌先が前歯にあたる点と母音のイとエの発音で口角が下がり気味になるということです。このクセで話している人は少なくありません。

イやエの発音の際の口の形は、口角の上がり下がりによって変わります。そして、イ段(キ・シ・チ・ニなど)とエ段(ケ・セ・テ・ネなど)の音全ての発音に影響します。実際にみなさんも鏡を見ながら、口角を上げたときと、下げた時に「イ」と「エ」の発音をして、イ段とエ段の音を聞き比べてみるとよくわかります。
また、口の形が正しく無いと舌の位置も正しくなりませんので、さらに発音に影響してしまいます。

滑舌が悪いと言われる人は、もしかしたら母音の口の形に課題があるかもしれませんので、まずは母音の口の形と舌の位置を鏡を見て練習することをおすすめします。
特に、プレゼンテーションやスピーチで、言葉が聞き取りづらいと言われる人や自分で気になっている人は、まずは母音を意識してみてはいかがでしょうか。

余談ですが、母音のトレーニングや発音トレーニングは、表情筋や喉の筋肉のトレーニングにもつながりますので、顔と声のアンチエイジングにもなりますよ。

次回以降も、発音やイントネーションについてお伝えして行きます。

諸橋寛子さんのTEDxKyotoでの発表の様子。
ご覧になっていない方は、ぜひご覧ください。

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苦手な言葉はありませんか?

こんにちは。 フリーアナウンサーの三島澄恵です。

TEDxKyotoに登壇された一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーション代表理事の諸橋寛子さんのスピーチトレーニングについて綴らせていただいています。

今回は「声に出した時、聞き取りにくい(言いづらい)言葉が無いか?」です。

声に出して練習を始めると、話し手が苦手だと感じる言葉や文脈が出てきます。 なぜかスムーズに言えない言葉、どうしても突っかかる言葉、明瞭に発音しにくい言葉など、黙読しているとスラスラ読めるのに、声に出すとスラスラとは行かないものです。

今回のように自分で原稿を考える時は、苦手な言葉を別の言葉にすることが可能です。また、言葉だけで聞くと聞き間違いを起こしそうな言葉も、できるだけ言い換えることをおすすめします。
例えば、私が放送局で教わった一つは「約」を「およそ」に言い換えることです。 「約」は「100」と聞き間違える可能性があるからです。

ただ苦手でも、どうしても変えられない場合もあります。例えば今回の諸橋さんであれば「父(ちち)」という言葉。自らのお父さんを表現する時の言葉です。

諸橋さんの話し方のクセの一つは、舌先が前歯にあたる点と母音のイとエの発音で口角が下がり気味になるということです。このクセは、諸橋さんに限らず、かなり多くの人に見受けられます。
しかし、諸橋さんは、その苦手な言葉に向き合い懸命にトレーニングを重ねられました。

発音の口の形は、直すのにかなりの労力と時間を要します。なぜなら、呼吸をするかのように当たり前の動きになっているからです。しかも何十年もの間それで過ごしてきたのですから、簡単には行きません。
それは、 姿勢を良くすることに似ているかもしれません。姿勢良くと意識していればその時はできますが、普段の生活に戻ると元の姿勢に戻っているという感じです。

しかし、諸橋さんは違いました。たった1ヶ月ほどの間で、苦手だった「チ」の発音が聞きやすくなりました。それは、ご本人の努力の賜物。
諸橋さんのトレーニングをしながら、私は人が変わることの素晴らしさ、何より人は変われるんだということを教わりました。

苦手な言葉を言いやすく言い換えることもできますが、苦手なことに取り組んで克服すれば、新しい世界を感じることができます。 声に出して練習して、様々な自分と出会ってみてください。

次回からは、日本語の発音のことを綴っていきます。


諸橋寛子さんのTEDxKyotoでの発表の様子。
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耳で聞いた時に伝わる内容

2月も中旬を過ぎ、少しずつ春の足音が聞こえてくるようになりました。
先週末は冷え込んだり、暖かくなったりと気温差も激しかったですが、みなさん体調を崩したりしていませんか?
これから三寒四温の時期。くれぐれもご自愛ください。

TEDxKyotoで登壇された一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーション代表理事の諸橋寛子さんのスピーチトレーニングですが、先週からは、スピーチの内容について綴っています。

スピーチの内容は、実際に声に出すトレーニングを始めてからも調整が続きました。本番は11月4日でしたが、最終的に原稿が固まったのは声に出したトレーニングの2日目の10月25日です。
声に出して練習することで様々な気づきが生まれますが、今回は「全体を耳で聞いた時に内容が伝わるか」という点について綴っていきます。

TEDxKyotoでは、発表者一人の持ち時間は約12分です。

12分というのは長いようで短く、短いようで長いものですが、聴衆の集中力が途切れることなく聞ける時間ということも考えられているように思います。

余談ですが、私たちの脳が本当に集中して話が聞けるのは10分〜15分程度だと言われています。そのため、15分程度で、次を聞けるように話題を変えたり、映像や画像を入れたり、他の人が話したりという工夫をすることで、次の15分の集中ができるというのです。
プレゼンテーションやスピーチに限らず、講演会や授業などの構成を作るときにも参考になるのではないでしょうか。

さて話は戻り、「全体を耳で聞いた時に内容が伝わるか」ということです。
プレゼンテーションや研修などは、聞き手に資料が用意されている場合も多いと思います。そのため、話が途中わからくなったり、聞き取れないところがあったりしても資料で確認することができます。しかし今回のように、手元に詳細な資料が無い場合は、耳で聞いて理解できるということがとても重要です。

みなさんも聞いていて経験が無いでしょうか?
一つ聞き漏らしてしまい、話についていけなくなったりしたことや、聞き終えて、なんだか印象が薄かったりしたこと。

今回のように、聴衆が詳細な資料を持たず、基本的には聴覚のみで情報を聞いていると、聞き終えたときに、何の話をしていたのか印象に残りづらいことが起きがちです。
それは、話し手の表現力も関係していますが、それ以前に、言葉選びや構成ということも大きく関係しています。例えば次のようなことです。

◆聴衆が耳で聞いて聞きやすく、理解しやすい言葉を使っていること。
 また、聞き間違いを起こさない言葉を使っていること。

◆伝えたいことを繰り返し伝えられていること。

◆伝えたかったことが印象に残る文脈であり、構成であること。

このような点は、実際に声に出して練習してこそわかります。

声に出して練習するときは、その様子を録画をして自分で見直すことをおすすめします。一番良いのは、私のような専門のトレーナーに細かなアドバイスをもらったり、周囲の人に立ち会って見てもらい感想をもらったりというように、第三者に意見を求めることです。
そうすることで、客観的視点でスピーチの内容を練り直すことができ、聴衆により深く、あなたの伝えたいことが伝わるようになります。

諸橋寛子さんのTEDxKyotoでの発表の様子。
ご覧になっていない方は、ぜひご覧ください。

TEDxKyoto 2018 スピーカー 諸橋寛子さん

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