コーラスリーディング

こんにちは。

フリーアナウンサーの三島澄恵です。

先日から、綴っているTEDxKyotoで登壇された一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーションの代表理事 諸橋寛子さんのスピーチトレーニングで、私自身が改めて気づいた点をブログにまとめています。

今日からは具体的なトレーニング法や本番前の準備、本番当日の裏話などを綴っていきます。

今日はトレーニングの一つ、コーラスリーディングについてです。

「コーラスリーディング」

コーラスは合唱。合唱のようにお手本と声を合わせてトレーニングする方法です。この方法は、短期間で話し方が身につきます。

諸橋さんのトレーニングは実際に対面で行ったのは3回です。国内外の出張も多く、財団の運営など日々忙しい中で、1ヶ月の間に3回のトレーニングも、かなり大変だったと思います。しかし、その3回では、どうしても十分な成果を得るには難しいです。トレーニングの日以外も、自主トレーニングをする事で完成度が上がります。

諸橋さんのすごいところは、忙しい中でも自主トレーニングをされるところです。その自主トレーニングに、コーラスリーディングを取り入れて頂きました。私が読んだ原稿を録音し、そのデータを聞きながら声を合わせて練習。そして、トレーニングの日は、本番を意識して全文を繰り返し練習。

さて、コーラスリーディングですが、皆さんが取り組まれる際は次の点を意識するとより効果が高くなります。

それは、とにかくお手本通りにやってみる事。そして、お手本と自分はどこが違うかを感じる事です。

お手本と合わせようとすると、ちょっとした間の長さの違い、イントネーションやアクセントの違い、抑揚や言葉の強弱など、様々な面で違いを感じると思います。例えば、自分ではゆっくり話していたつもりでも、お手本と一緒だと、さらにゆっくりに感じられたり、間も長く感じられたりなど、最初は戸惑ったり、上手く合わせられないかと思います。それでもまずは、お手本通りに練習してください。そうすると、次第にその通りに話せるようになります。

コーラスリーディングをすると個性が失われる。というような事を言う人もいます。しかし私は、そうは思いません。

どんなにお手本通り真似しても、その人自身の個性は滲み出ます。声の質、ちょっとした間の取り方や息づかいの違い、言葉への思い入れなど、その人が持っているものが必ず出てきます。

狂言師の野村萬斎さんが、あるインタビューに答えられている中で、

「わたしの父や先輩方を見ていますと、意図的にではなく型から個性が滲み出ていますし、さらに言えば型を感じさせなくなる。」とありました。

話し方にも基本はあり、決まった型のようなものがあります。皆さんも話し方の本やセミナーを受けたりすると、基本的なことはどこもほぼ同じはずです。これは話し方に限らず、スポーツや芸術、仕事など全てに言えると思います。

その基本を押さえないまま自己流で上手くなる人も稀にいますが、そういう人もまた、ある一定のところで基本を学び直す人が多いです。

中には、奇をてらうことが個性と思っている人もいますが、それは自己満足であることが多いものです。

少し話が逸れてしまいましたね。

話す力を磨きたい人こそ、まずは上手な人や目標とする人の話し方を真似してみてください。それが徐々に自分の話し方に変わっていきます。

諸橋寛子さんのTEDxKyotoでの発表の様子。
ご覧になっていない方は、ぜひご覧ください。

TEDxKyoto 2018 スピーカー 諸橋寛子さん

話し方は、経営者やビジネスマン、学校の先生や研修講師、さらには、大学生、高校生、小中学生、未就学児までまで、幅広い方々を対象に行っています。
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ブレスと間の関係

こんにちは。
フリーアナウンサーの三島澄恵です。

先日から、綴っているTEDxKyotoで登壇された一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーションの代表理事 諸橋寛子さんのスピーチトレーニングで、私自身が改めて気づいた点をブログにまとめています。

今回のスピーチのように決まった原稿を覚えて話すというときに、誰もがほぼぶつかる壁は、不自然なイントネーションです。昨日は音の上がり下がりについて書きました。

今日は、ブレス(息)と間の取り方についてです。
ブレスと間の取り方もまた、文章のつながり方と関係しています。

ここでもまた昨日、例に出した文で説明しましょう。

「私は、フリーアナウンサーの三島澄恵です。」

この一文であれば、通常話しているときは途中でブレスを取らずに一息で話しますが、これが原稿になっていると、次のように話す人がほとんどです。

「私は、(ブレスを取る)フリーアナウンサーの(ブレスを取る)三島澄恵です。」という具合です。

「私は」の後でブレスを取ると、「は」の音が下がり、「フリーアナウンサー」の出だしの音が高くなります。「フリーアナウンサーの」の後でブレスを取ると、同じように「の」で音が低くなり、「三島」で音が上がるため、不自然なイントネーションがつきます。

また、ブレスを取ると、その分、間が必要になります。ほんのコンマ何秒のことですが、そのわずかな間が文章の意味と関係しています。

例文ですが、「私は」の後の間の長さと「フリーアナウンサーの」の後の間の長さは、若干ですが、前者の方が長くなります。それは、「私は」よりも「フリーアナウンサーの」の方が、三島澄恵とのつながりが強くなっているからです。

ブレスや間の取り方、昨日お伝えした音の高低については、文章でお伝えするのはなかなか難しく、分かりづらかったかと思いますが、1文が長くなると伝わりづらくなることはお分かりいただけたでしょうか?

今回の諸橋さんの原稿は、長い文章でも1文80文字少しです。他の文章は概ね60〜70文字で、短いものであれば20〜30文字です。ニュース原稿などでは120文字近いものもありますが、それは長い文章で、多くは70〜80文字前後です。

文章が長ければ長いほど、主語と述語の関係性や、説明する語の関係性が分かりづらくなるので、スピーチ原稿やプレゼンの話す内容をまとめている人は、もう一度、1文の長さを見直してみてください。

そして準備ができたら、必ず声に出して練習してみてください。そうすると、話しやすさや伝わりやすさを確認することができます。

次回は、実際にどのような練習をすればいいのかをお伝えします。

諸橋寛子さんのTEDxKyotoでの発表の様子。
ご覧になっていない方は、ぜひご覧ください。

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日本語の特徴を話し方に生かす

こんにちは。
フリーアナウンサーの三島澄恵です。

先日から、綴っているTEDxKyotoで登壇された一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーションの代表理事 諸橋寛子さんのスピーチトレーニングで、私自身が改めて気づいた点をブログにまとめています。

昨日は、原稿を話すように読むという話でした。

今日は、日本語の特徴を話し方に生かすという点でお伝えします。

日本語の基本的な構造は、主語があり、その間に言葉が入り、通常最後に述語がきます。述語は、主語が何をした、どうしたなどの部分になります。

昨日例に出した「私は、フリーアナウンサーの三島澄恵です。」という文章であれば、「私は」という主語は、三島澄恵という部分に繋がらないと意味が成立しません。「私は」が「フリーアナウンサーの」の部分にかかってしまうと意味が違ってきます。

「私は」が「三島澄恵です」に繋がるには、私はの「は」の部分の音の高さが上がりすぎても下がりすぎても、意味が成り立たなくなります。

実際に、声に出して言ってみるとわかりやすいでしょう。できれば、録音をして聞き直してみてください

私はの「は」の音を上げて、「私は、三島澄恵です。」

私はの「は」の音を下げて「私は、三島澄恵です。」

どうでしょうか?なんだか不自然に聞こえ、意味のつながりがわかりくいのではないでしょうか?

さて例題は、「私は」と「三島澄恵です。」の間に、三島澄恵を説明する「フリーアナウンサーの」が入っています。フリーアナウンサーという言葉は、三島澄恵につながっていく必要があるわけです。そのため、「フリーアナウンサーの」の「の」の部分の音もまた、高が上がりすぎても下がりすぎても、意味が成立しなくなります。

最初にお伝えしたように、日本語は、主語と述語の間に、様々な説明が入ります。主語と述語の間に言葉が入れば入るほど、主語と述語が離れてしまい意味がわかりづらくなります。さらには、不自然なイントネーションがついたり、不自然な間を取りやすくなる原因になります。スピーチや挨拶、プレゼンテーションなど、人前で話す時はできるだけ1文を短くした方が、主語と述語の関係性が分かりやすくなります。それにより、聞いている人は理解しやすくなりますし、話し手自身も話しやすくなるわけです。

今、話す内容を考えている人は、この点を踏まえて文章を作ってみてください。文章を作ったら実際に声に出してみて、話しやすいかや聞き手がわかりやすいかを確認し、もう一度練り直してみてください。

昨日のブログに書きましたが、この不自然な音の上がり下がりは、原稿を見ながら話したり、または、覚えて話す場合に、誰もが一度は必ずと言っていいほどぶつかる壁です。
諸橋さんだけでなく、今回、TEDxKyotoで日本語で登壇された人ほぼ全員がこの壁にぶつかっていました。それを自然な話し方にするためのアドバイスやトレーニングについては、改めてお伝えします。

音の高低は、ブレスを取る(息を吸う)場所や間の取り方とも関係していますので、次回は、その点をお伝えしていきます。


諸橋寛子さんのTEDxKyotoでの発表の様子。
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原稿を話すように読むには?

こんにちは。
フリーアナウンサーの三島澄恵です。

先日から、TEDxKyotoで登壇された一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーションの代表理事 諸橋寛子さんのスピーチトレーニングを担当させていただいたときのことを綴っています。

原稿ができあがり、前回のブログからは声に出してのトレーニングについてお伝えしていますが、原稿の文章を話すように自然に読むというのは、実はとてもハードルが高いのです。
アナウンサーがニュース原稿を読んでいる様子は、皆さん誰しも見聞きしていると思います。原稿を読むだけなら誰もでもできると思うかもしれませんが、原稿を単に読むことができても、それを自然なイントネーションやアクセントで読むにはトレーニングが必要です。

みなさんも試しに一度、新聞などの文章を声に出してアナウンサーのように読んでみてください。そうすると、自然に読むという難しさを感じていただけるのではないかと思います。

その難しさのひとつがイントネーションです。これもまた、母音と同じく日本語の特徴から来るものかもしれません。

日本語は音の高低が鍵を握っています。それは、アクセント(アクセントについては、後日改めて綴ります。)もですが、1文の中でも言えます。

日本語は、話し始めの音が一番高く、途中上げ下げをしながら、文末は音が低くなっていきます。

例えば、「私は、フリーアナウンサーの三島澄恵です。」という1文。私はの「わ」、フリーの「ふ」、三島の「み」で音は高くなりますが、最後の「です」は、「私は」よりも低い音になります。実際に声に出してみるとわかりますが、「です」が「私は」よりも音が高くなると、とても不自然に聞こえます。

加えて、「私は」の「は」の部分。
この「は」(助詞)の音を必要以上に高くしたり、低くすると自然な口調ではなくなります。そして私たちは、原稿を読むと不自然な音の上げ下げを行ってしまうのです。普段の会話では、そんな不自然なイントネーションになることはないのに、原稿になるとそうなってしまうという不思議です。

そしてこれは、トレーニングを始めて、誰もが必ず通る道でもあります。

今回、諸橋さんのトレーニング以外に、TEDxKyotoの前日のリハーサルで、登壇者の方々のボイストレーニングも担当させていただきましたが、みなさん不自然なイントネーションがついていました。TEDxKyotoのトレーニング担当の方も、その点を何度も注意されていましたが、なかなかすぐには直らない難しいポイントだと、改めて実感しました。

諸橋さんは、練習を何度も録音し、音の違いを聞いて直していきました。

自分では不自然な話し方をしていないと思っていても、実際に聞いてみると不自然だと気づくことができます。もし今、トレーニングをしている人は、練習を録音して聞き直して、繰り返しトレーニングをすることをおすすめします。


文章は間違えずに読んでいるだけでは伝わりません。原稿をいかに自然に話すように読み、かつそこに説得力のある表現をつけられるかがスピーチには求められます。

次回は、日本語の文法が関係している音の高低についてお話しします。

諸橋寛子さんのTEDxKyotoでの発表の様子。
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滑舌を良くするのは母音

こんにちは。
フリーアナウンサーの三島澄恵です。



TEDxKyotoの登壇者の諸橋寛子さんのスピーチトレーニングをさせて頂き、私自身が改めて感じた話す力についてや、話す時のコツについて綴っています。

前回までは、話す内容についてお伝えしてきましたが、今日からは日本語の特徴からわかる発音やイントネーションのお話をして行きます。

今回は母音についてです。

日本語の母音は「アイウエオ」の5つです。これに子音がついて音をなし、連なって行くことで言葉になります。

ちなみに英語の母音はかなり多く、アに近いエやオに近いウなど、さらには、単母音・長母音・二重母音など様々です。中学校の英語の先生に、英語の母音の数を聞くと「30個近い」と教えてくださいました。

日本語は、「アイウエオ」のたった5つですが、この5つの母音の口の形と舌の位置が全ての言葉の元になります。劇団四季のトレーニングでは、セリフを全て母音に置き換えて行っています。
例えば私の名前「みしますみえ」であれば、「いいあういえ」と置き換えて練習をするということです。そうやって母音に置き換えることでセリフがはっきりと発音でき、観客のみなさんが聞きやすくなるのです。それほど、日本語の母音は、言葉を明瞭に話すために重要なのです。

前回のブログで、諸橋さんの苦手だった「父(ちち)」という発音の話をしました。諸橋さんの話し方のクセの一つは、舌先が前歯にあたる点と母音のイとエの発音で口角が下がり気味になるということです。このクセで話している人は少なくありません。

イやエの発音の際の口の形は、口角の上がり下がりによって変わります。そして、イ段(キ・シ・チ・ニなど)とエ段(ケ・セ・テ・ネなど)の音全ての発音に影響します。実際にみなさんも鏡を見ながら、口角を上げたときと、下げた時に「イ」と「エ」の発音をして、イ段とエ段の音を聞き比べてみるとよくわかります。
また、口の形が正しく無いと舌の位置も正しくなりませんので、さらに発音に影響してしまいます。

滑舌が悪いと言われる人は、もしかしたら母音の口の形に課題があるかもしれませんので、まずは母音の口の形と舌の位置を鏡を見て練習することをおすすめします。
特に、プレゼンテーションやスピーチで、言葉が聞き取りづらいと言われる人や自分で気になっている人は、まずは母音を意識してみてはいかがでしょうか。

余談ですが、母音のトレーニングや発音トレーニングは、表情筋や喉の筋肉のトレーニングにもつながりますので、顔と声のアンチエイジングにもなりますよ。

次回以降も、発音やイントネーションについてお伝えして行きます。

諸橋寛子さんのTEDxKyotoでの発表の様子。
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苦手な言葉はありませんか?

こんにちは。 フリーアナウンサーの三島澄恵です。

TEDxKyotoに登壇された一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーション代表理事の諸橋寛子さんのスピーチトレーニングについて綴らせていただいています。

今回は「声に出した時、聞き取りにくい(言いづらい)言葉が無いか?」です。

声に出して練習を始めると、話し手が苦手だと感じる言葉や文脈が出てきます。 なぜかスムーズに言えない言葉、どうしても突っかかる言葉、明瞭に発音しにくい言葉など、黙読しているとスラスラ読めるのに、声に出すとスラスラとは行かないものです。

今回のように自分で原稿を考える時は、苦手な言葉を別の言葉にすることが可能です。また、言葉だけで聞くと聞き間違いを起こしそうな言葉も、できるだけ言い換えることをおすすめします。
例えば、私が放送局で教わった一つは「約」を「およそ」に言い換えることです。 「約」は「100」と聞き間違える可能性があるからです。

ただ苦手でも、どうしても変えられない場合もあります。例えば今回の諸橋さんであれば「父(ちち)」という言葉。自らのお父さんを表現する時の言葉です。

諸橋さんの話し方のクセの一つは、舌先が前歯にあたる点と母音のイとエの発音で口角が下がり気味になるということです。このクセは、諸橋さんに限らず、かなり多くの人に見受けられます。
しかし、諸橋さんは、その苦手な言葉に向き合い懸命にトレーニングを重ねられました。

発音の口の形は、直すのにかなりの労力と時間を要します。なぜなら、呼吸をするかのように当たり前の動きになっているからです。しかも何十年もの間それで過ごしてきたのですから、簡単には行きません。
それは、 姿勢を良くすることに似ているかもしれません。姿勢良くと意識していればその時はできますが、普段の生活に戻ると元の姿勢に戻っているという感じです。

しかし、諸橋さんは違いました。たった1ヶ月ほどの間で、苦手だった「チ」の発音が聞きやすくなりました。それは、ご本人の努力の賜物。
諸橋さんのトレーニングをしながら、私は人が変わることの素晴らしさ、何より人は変われるんだということを教わりました。

苦手な言葉を言いやすく言い換えることもできますが、苦手なことに取り組んで克服すれば、新しい世界を感じることができます。 声に出して練習して、様々な自分と出会ってみてください。

次回からは、日本語の発音のことを綴っていきます。


諸橋寛子さんのTEDxKyotoでの発表の様子。
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耳で聞いた時に伝わる内容

2月も中旬を過ぎ、少しずつ春の足音が聞こえてくるようになりました。
先週末は冷え込んだり、暖かくなったりと気温差も激しかったですが、みなさん体調を崩したりしていませんか?
これから三寒四温の時期。くれぐれもご自愛ください。

TEDxKyotoで登壇された一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーション代表理事の諸橋寛子さんのスピーチトレーニングですが、先週からは、スピーチの内容について綴っています。

スピーチの内容は、実際に声に出すトレーニングを始めてからも調整が続きました。本番は11月4日でしたが、最終的に原稿が固まったのは声に出したトレーニングの2日目の10月25日です。
声に出して練習することで様々な気づきが生まれますが、今回は「全体を耳で聞いた時に内容が伝わるか」という点について綴っていきます。

TEDxKyotoでは、発表者一人の持ち時間は約12分です。

12分というのは長いようで短く、短いようで長いものですが、聴衆の集中力が途切れることなく聞ける時間ということも考えられているように思います。

余談ですが、私たちの脳が本当に集中して話が聞けるのは10分〜15分程度だと言われています。そのため、15分程度で、次を聞けるように話題を変えたり、映像や画像を入れたり、他の人が話したりという工夫をすることで、次の15分の集中ができるというのです。
プレゼンテーションやスピーチに限らず、講演会や授業などの構成を作るときにも参考になるのではないでしょうか。

さて話は戻り、「全体を耳で聞いた時に内容が伝わるか」ということです。
プレゼンテーションや研修などは、聞き手に資料が用意されている場合も多いと思います。そのため、話が途中わからくなったり、聞き取れないところがあったりしても資料で確認することができます。しかし今回のように、手元に詳細な資料が無い場合は、耳で聞いて理解できるということがとても重要です。

みなさんも聞いていて経験が無いでしょうか?
一つ聞き漏らしてしまい、話についていけなくなったりしたことや、聞き終えて、なんだか印象が薄かったりしたこと。

今回のように、聴衆が詳細な資料を持たず、基本的には聴覚のみで情報を聞いていると、聞き終えたときに、何の話をしていたのか印象に残りづらいことが起きがちです。
それは、話し手の表現力も関係していますが、それ以前に、言葉選びや構成ということも大きく関係しています。例えば次のようなことです。

◆聴衆が耳で聞いて聞きやすく、理解しやすい言葉を使っていること。
 また、聞き間違いを起こさない言葉を使っていること。

◆伝えたいことを繰り返し伝えられていること。

◆伝えたかったことが印象に残る文脈であり、構成であること。

このような点は、実際に声に出して練習してこそわかります。

声に出して練習するときは、その様子を録画をして自分で見直すことをおすすめします。一番良いのは、私のような専門のトレーナーに細かなアドバイスをもらったり、周囲の人に立ち会って見てもらい感想をもらったりというように、第三者に意見を求めることです。
そうすることで、客観的視点でスピーチの内容を練り直すことができ、聴衆により深く、あなたの伝えたいことが伝わるようになります。

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話し手の人間味が伝わる話

こんにちは。フリーアナウンサーの三島澄恵です。

TEDxKyotoに登壇された一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーション代表理事の諸橋寛子さんのトレーニングに関わらせていただいた本番までの4ヶ月間を綴っています。

前回のブログでは、より具体的で実体験の話の方が伝わるということをお伝えしましたが、今回も実体験の話が、話により深みを与えるということを綴ります。

原稿がある程度できた頃に、TEDxKyotoの担当者の方から「きれいにまとまりすぎている」というアドバイスがあったと諸橋さんに聞きました。きれいにまとまっているというのは悪いことではありませんが、聴衆の心に届くには、話し手の人間味や人柄が伝わる工夫が必要です。
その時ふと思い出したのが、以前、諸橋さんから聞いた子供たちの話でした。

それは、子供たちの大脱走の話


諸橋さんが代表を務める財団では、小学生を対象にスポーツキャンプという企画を行っています。2泊3日で、様々なスポーツを体験するんですが、その指導は日本代表などを務めるトップアスリート。
キャンプ運営はボランティアを募集、外国人の参加もあって国際交流も行われます。夜は英語で発表会もあったり、貴重な経験ができる企画です。

けれど、このスポーツキャンプでは、毎回と言って良いほど、子供たちのケンカや誰かが脱走しそうになったり、帰りたいとホームシックになったり、それはもう大変なんだそうです。小学3年生~6年生なので親御さんと離れ、しかも初めて会う友達ばかりで、ふとした瞬間に寂しくなるんでしょうね。

そんな様々なことが起きつつも、子供たちは、2泊3日のスポーツキャンプが終わる頃、大きく成長しているんだそうです。

その話をしている時の諸橋さんは、とても喜びに満ち溢れていて、内側からのエネルギーがほとばしっているような感じを私は感じていました。
スポーツキャンプを通して、子供たちが変化・進化・成長を遂げて行く姿は、まさに諸橋さんが今回のTEDxKyotoで聴衆に伝えたかったことです。

この子供たちの話。
スピーチの後半部分に出てきます。会場はちょっとした笑いに包まれますが、それ以上に、子供たちが成長し、生き生きとしている姿が聴衆にも伝わっていたように思います。それは話し手である諸橋さんの子供たちへの気持ちが伝わったからこそだと感じています。

話し手が喜びに満ち溢れていたり、情熱を込めて話せる話は話し手の気持ちが伝わる話です。
それはまた、話し手の人間味や人柄が伝わることにもつながります。

あなたにもきっと、そんな話題があると思います。
あなたの話す力は、あなたの心の引き出しにたくさんありますよ。

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抽象的な話よりも具体的な話

こんにちは。フリーアナウンサーの三島澄恵です。

TEDxKyotoに登壇された一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーション代表理事の諸橋寛子さんのトレーニングに関わらせていただいた本番までの4ヶ月間を綴っています。

前回からの続きです。諸橋さんのトレーニングがスタートしてからも、話す内容の調整はギリギリまで続きました。

その一つが、「より具体的で聴衆の心に届く話題であるか」です。

諸橋さんが財団を設立し、最初に行ったのは、放射能問題で外で遊べなくなった福島の子供達のための無料運動施設の開設でした。

諸橋さんは福島県郡山の出身。ご自身にもお子さんがいて、外で遊べない子供達の姿は、より強く心に残っていたのだと思います。私も諸橋さんから何度となくこの時のお話を伺いましたが、その話をされる時の諸橋さんの姿を見るたびに、故郷福島のために、福島の子供達のためにという想いがひしひしと伝わってきました。

スピーチの中には施設開設の話は入っていますが、しかしまた、非常にデリケートな話題であることも事実です。限られた時間の中で、誤解を与えるような表現があってはいけない。けれど、切実な現実を伝えたい。
そこを踏まえて、ディスカッションを行いながら一緒に調整をして行きました。

諸橋さんの話を聞いていると、震災後、福島の子供達の肥満率は一気に増加したというお話があり、この話を加えることにしました。具体的なデータを加えなくても、これだけでも十分に子供達が外で遊ぶことや体を動かすことがどれほど大切なのかが伝えられると考えたからです。

抽象的な話よりも、具体的な話。
さらには、話し手の実体験は説得力が高まります。

話す内容を考える時、心の奥にしまっていたり、すでに忘れてしまっているような経験を思い返してみることをおすすめします。一人で考えても良いのですが、もし上手な聞き役の人がいれば、その人に話してみてください。
トーク・スルーというテクニックがあります。これは、自分の考えていることを第三者に話すということです。話すことで記憶(脳)が刺激され、思わぬアイディアやヒントが浮かぶきっかけになります。

私がスピーチトレーニングを行う際は、このトークスルーのテクニックを使うようにしています。そうすることで、スピーカーの中にある思考が整理され、クリアになっていきます。

プレゼンやスピーチを控えているあなたも、誰かに話を聞いてもらってはどうでしょう?もしかしたら、話す力をアップさせる話題が湧き出て来るかもしれませんよ。

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タイムリーな話題は無いだろうか?

こんにちは。フリーアナウンサーの三島澄恵です。

TEDxKyotoに登壇された一般財団法人ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーション代表理事の諸橋寛子さん。そのトレーニングに関わらせていただいた本番までの4ヶ月間を綴っています。

話す内容は、トレーニングを始めてからもギリギリまで調整が続きました。

その理由はいくつかありますが、ここでは4つほど紹介しましょう。

・タイムリーな話題を入れるため

・より具体的で聴衆の心に届く話題であるか

・全体を耳で聞いた時に内容が伝わるか

・声に出した時、聞き取りにくい(言いづらい)言葉が無いか

まずは、タイムリーな話題について。
これは、TEDxKyotoの運営団体からのアドバイスで、諸橋さんが、TEDxKyotoの本番直前の10月上旬に、国際オリンピック委員会(IOC)がブエノスアイレスで開いたフォーラムにパネリストとして出席したことを加えるというものでした。

この話題を加えるというのは、再来年(TEDxKyoto当時)に控えている東京オリンピック・パラリンピックのこともあり、IOCでのパネリストの話題は、聴衆の興味を惹きつけるものだということもあったのだと思います。

何より、諸橋さんが日本の代表としてスポーツについて語ることができる人であるということも伝わったのではないかと考えています。

しかし、オリンピックの話題は様々な制約がありパブリックな場でどこまで話せるか、また、その際の写真は使えるのかなどの調整も必要でした。またそれ以上に、ある程度固まっていた原稿のどの位置にこの話を加えるのか?諸橋さんは随分と悩まれました。

TEDxKyoto 諸橋寛子さんのスピーチより IOC主催のフォーラムの様子

私も放送局で番組に携わっていた時、このタイムリーな話題というのは常に考えていました。

例えば、健康情報の話題。
冬なのに夏の話題を取り上げたとしたら、あなたは興味を持ちますか?
インフルエンザが流行している冬の時期に、夏場のプールなどで流行る感染症の話をしてもピンと来ないと思います。もちろんその感染症が冬に流行ったとなれば別の話で、それこそタイムリーな話題になるわけです。
放送局時代、番組を考えていたときは、このタイムリーな話題に加え、重要度や視聴者が今何を知りたいかや、逆に作り手側から視聴者に向けた問題定義や提案など、様々なことを考えていつもネタ探しをしていました。

話が少し外れてしまいましたね。
タイムリーな話題だからといって何でも加えて良いわけではありません。話し手の説得力を高め、かつ聴衆の心も惹きつけるものであれば、ギリギリまで調整する価値があるということです。

この内容で十分だろうか?
タイムリーな話題は無いだろうか?
ぜひ、ギリギリまで考えてみてください。

他の理由については、明日以降綴っていきます。

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